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府医ニュース

2021年2月3日 第2954号

クラスター分析、調査研究からの教訓

 1月8日、国の新型コロナウイルス感染症対策分科会が開催され、令和2年12月以降に全国で報告されたクラスターの解析結果が示された。なお、同日付で、国立感染症研究所による「積極的疫学調査実施要領」が改訂され、同日から神奈川県が、22日からは東京都が、積極的疫学調査の対象を縮小し、高齢者施設や医療機関に絞り込んだため、このような形でのデータはこれが最後になるかもしれない。
 感染者5人以上のクラスター807件(感染者数1万3252人)中、医療・福祉施設が45%(361件)と最も多く、以下、飲食関連19%、教育施設15%、職場関連12%と続く。飲食関連156件の中では、接待を伴う飲食店が50%を占め、次いで飲食店25%、カラオケ12%、会食10%、ホームパーティー3%となっている。教育施設123件では、高校が33%と最多で、以下、保育所・幼稚園22%、大学16%、中学校11%、小学校7%となる。ただし、高校・大学関連は、小学校・中学校関連に比べ、クラスターごとの感染者数が多いと指摘された。医療・福祉施設でのクラスターが多いが、これらから地域に広がることは少なく、飲食の場での感染対策とともに、若者の自宅での会食に注意喚起がなされた。
 さて、第2946号本欄(2年11月18日付)で紹介した、同分科会によるクラスター分析以降も、様々な感染やクラスターに関する報告がなされている。昨年12月28日には、国立感染症研究所から「新宿区繁華街におけるいわゆる『接待を伴う飲食店』における新型コロナウイルス感染症の感染リスクに関する調査研究(中間報告)」が公表された。同地域で協力の申し出があったホストクラブおよび20歳以上の従業員(10月20日時点で4店舗68人)を対象に行われ、感染者は全体で31人(46%)であった。一般的な感染防止策はとられているいわゆる優良店と考えられたが、感染率は高い。法に規定された店舗構造による換気の難しさや、客に感染症対策を実施してもらうことの難しさが明らかになった。加えて深夜帯やアフター時の酔いに伴う感染症対策への意識低下や集団生活といった社会背景、店舗外の従業員の行動に伴う感染リスクもあったと考察されている。
 多くの教訓が蓄積されているものの、感染は抑えられない――。1月12日に開催された「大阪府新型コロナウイルス対策本部会議」では、特に10歳代~30歳代の新規陽性者数が急増しており、20歳代~50歳代の感染拡大が、家庭内、医療機関や高齢者施設等での感染につながり、重症者増加の要因と分析した。そして年末年始は、会食・カラオケなど同窓会、友人同士や親族の集まり、クリスマスや忘年会、新年会や初詣等のイベントによる感染事例が数多いと指摘している。
 社会全体での行動変容が求められているが、行動変容(生活習慣改善)が難しいのは、我々医師が日々、身に染みていたことでもある。そのような中、最近話題となった「黙食」は、ひとつの形として定着し得るだろうか。(学)