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医師・医療関係者のみなさまへ

緊急フォーラム 新型コロナ禍子ども達を守る

府医ニュース

2021年2月3日 第2954号

 大阪府医師会は1月9日午後、府医会館で「新型コロナウイルス感染症から子ども達を守りたい――今、学校ができることを考える」と題して緊急フォーラムを開催した。当日は、3人の講師による緊急提言、中央情勢および調査報告などが行われ、学校医や教育関係者ら約200人が会場およびウェブにより受講した。

 当日は、森口久子理事が司会を務め開催。
 冒頭、あいさつに立った茂松茂人会長は、新型コロナの影響により学校が長期間休校となったが、子ども達のストレスとなり、教員・教育関係者も心を痛めたことをねぎらった。学校は授業だけでなく、友達との交流・給食・クラブ活動や修学旅行など様々な場で学ぶことが重要との見方を示した。
 次いで、大阪府学校保健会の松本泰仁会長、来賓として大阪府教育委員会の酒井隆行教育長からあいさつがあった。

子ども達への適正な感染対策に視点を

 引き続き、緊急提言「新型コロナから子ども達を守るために――本当の敵はどこにいるのか」と題して、種市(たねいち)尋宙(ひろみち)氏(富山大学学術研究部医学系小児科学講師)が講演。まず、種市氏は、新型コロナは小児死亡者がいないにもかかわらず、「子ども達のために注意・恐れ・対応をすべき点を間違えていないか」と疑問を投げかけた。その上で、休校で背負うリスクとして、▽家庭内での事故・虐待▽給食の中止による貧困▽SNSを通じた事件――などを挙げ注意を促した。
 なお、海外の臨時休校に関する論文には、感染予防効果に否定的なものが多く、小児は新型コロナに対する感受性も重症度も低いなど、一斉休校は意味がないと断言した。
 また当初、児童・生徒や教員が新型コロナに感染した際、偏見や差別がひどく、対策に力を入れたことを報告。肝心なことは保護者と学校現場の意思統一と力説した。更に、「感染対策に重点を置いた対応が適切なものか」「教育・学校とは何か」など大事な点を見失わないことが不可欠と加えた。
 結びに、子ども達への適正な感染対策の在り方に視点を置くよう、地方・国家としてデータの蓄積や解析が大事だと述べた。

感染状況を踏まえ教育活動の継続を

 次に小林沙織氏(文部科学省健康教育・食育課学校保健対策専門官)が、同省作成の「学校における新型コロナ対策――学校の新しい生活様式」を基に中央情勢を語った。
 感染事例の分析では、児童・生徒の感染は、家庭内感染が54%と最も多く、学校内感染は16%と低い点を指摘。地域の感染状況を踏まえて、「学習内容等を工夫しながら可能な限り授業や行事などの教育活動を継続し、子ども達の健やかな学びを保障することが必要」と力を込めた。
 また、来年度は「学校等欠席者・感染症情報システム」と「統合型校務支援システム」との連携により、学校における集団感染等を早期に発見・探知し、国の感染症対策に活用したいとまとめた。

各種ストレスの影響 学校再開後も症状が

 最後に、半谷(はんがい)まゆみ氏(国立成育医療研究センター社会医学研究部研究員)が、同センターが実施する「子どもたちの生活と健康に関する調査」の結果を報告。昨年4月の緊急事態宣言下で臨時休校が続き、各種ストレスや友達と会えない影響から、学校再開後も「集中できない」「寝付けない」などの症状が約7割の子ども達に出ているとした。また、保護者にも大きなストレスがかかることでトラブルも増加。まずは「気持ちを受け止める」そして「一緒に解決していく」ことの重要性を説いた。
 最後に、中尾正俊副会長は、子ども達がより安全・安心に学校で生活を送れるよう、医師会も一緒に取り組んで行きたいと締めくくった。