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府医ニュース

2021年1月27日 第2953号

 ◆教えや思想の本質が正しく理解され伝わらなければ、それは危険なものになる。親鸞の教えとは異なる解釈が広まっていることを歎き、弟子の唯円がその真意を『歎異抄(たんにしょう)』としてまとめた。
 ◆一節に「今生に、いかにいとほし不便とおもふとも、存知のごとくたすけがたければ、この慈悲始終なし」とある。苦悩する人を思い通りに救うことは困難で、慈悲には限界があるとの親鸞の境地と理解する。
 ◆新たに新型コロナの一年が始まるや、医療崩壊に陥り、早々に緊急事態宣言の発出となった。先の一年の教訓を生かせず、むしろ矛盾を抱えたままの政策が仇となった。感染への不安、罹患しての苦痛、経済的苦悩、日常生活・社会活動制限のストレスなど、すべての煩いへの慈悲は及ばず救うことは困難にある。
 ◆親鸞は、自己矛盾を抱えながら浄土仏教の教えを極めたという。深い混迷にさまよう今、皆それぞれに矛盾を抱えながらの生活が続くことになる。感染症がいずれ必ずや収束するその時まで、心折れないことを念じて止まない。(誠)