TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

新春のごあいさつ

大阪府医師会長 茂松茂人

府医ニュース

2021年1月6日 第2951号

コロナ禍が示した「国民皆保険」の重要性

 明けましておめでとうございます。令和3年の新年を迎えるにあたり、会員の先生方におかれましては、健やかに新年を迎えられたことと、お慶び申し上げます。
 昨年は何と言っても新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)の世界的な大流行によって、世の中の状況が一変した年であったと言えます。緊急事態宣言が発令され、外出自粛や休業要請も行われ、生活様式の変容を余儀なくされました。いわゆる3密を避け、手洗い、うがい、マスクの着用が常識になるとともに、多くの企業でテレワークの導入が進み、働き方もこれまで以上に多様となりました。本会でも感染防止のため、ウェブを活用した会議や研修会の実施にも努めて参りました。感染の急速な拡大に伴い、病床不足が深刻化し、都市部を中心に医療崩壊の危機にも直面しました。医療従事者の疲弊が増すとともに、感染症患者を受け入れた病院だけでなく、受診控えによって多くの医療機関の経営にも暗い影を落としました。
 政治では安倍政権を継承した菅政権が昨年9月に発足して3カ月余りが経過しました。新政権は規制改革やデジタル改革を1丁目1番地と位置付けて、デジタル庁の創設や縦割り行政の打破を進める方向性をはっきり打ち出し、スピード感をもって実行に移そうとしています。既に医療分野では課題を抱えたまま初診からのオンライン診療も恒久化されることが決まり、今年3月からはマイナンバーカードを活用したオンライン資格確認もスタートする予定で、デジタル化が一挙に進みそうな情勢であります。
 新型コロナを契機として、これほどまでに地域の医療体制の大切さが国民に意識されたことはありませんでしたし、地域医療を支える国民皆保険制度は社会的共通資本としてその重要性が再認識されたと言っても過言ではありません。同時に、多くの国民は日常的に診療や健康相談に応じてくれる〝かかりつけ医〟を持つことの重要性に気付かれたと思います。本会ではこれまでにも増して国民から信頼される〝かかりつけ医機能〟を発揮できるよう、その能力の維持・向上に努めて参る所存であります。
 一方、これまでの新型コロナへの対策で多額の国費が投入され、政府の債務残高は膨張しており、感染収束後は緊縮財政に舵を切り、国民に給付削減や負担増を強いる改革は避けられないとの指摘もあります。来年予定される診療報酬改定への影響も懸念されます。しかし、それによって社会保障の機能が損なわれてしまっては本末転倒で、国民の安心への基盤が崩れてしまうことになりかねません。更には、安倍前政権下での景気拡大は5年11カ月と戦後2番目の長さを記録しましたが、企業の内部留保が大幅に膨らんだ一方で、労働分配率が低下し実質賃金は伸び悩み、非正規雇用者数も増加している状況であります。欧米と同様に日本でも経済格差が深刻度を増しており、コロナ禍で更に深まった経済格差が医療格差につながることのないよう、国民皆保険制度を維持、強化していかなければなりません。
 政権が変わり日医のトップも変わる中で、政治との関係をどう円滑に築いていくかは大きな課題で、一朝一夕にできることではございませんが、先の見通せない時代であるからこそ、我々医師は開業医や勤務医の枠を超えて一致団結する必要があります。
 引き続き、「国民医療の充実」「会員のために汗をかく」「組織強化」を念頭に、与えられた使命を果たしていく所存でありますので、会員の先生方のご支援、ご協力をお願い申し上げます。会員ならびにご家族、職員の皆様方が今年1年ご健勝でご活躍されることを心より祈念申し上げます。