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勤務医の窓

ここまでの新型コロナウイルス感染症拡大期を振り返って思うこと

府医ニュース

2020年9月16日 第2940号

 今年の年明け早々より始まった新型コロナウイルス感染症(COVID―19)の拡大が、この原稿を書いている8月中旬には収まりそうにありません。
 1月16日に国内で初めての感染者が確認され、同月29日に大阪府での第1例目が確認されました。2月6日には当院1例目の陽性患者が入院、以降ダイヤモンド・プリンセス号からも3名受け入れました。
 3月7日に堺市内での第1例目が確認され、入院患者が徐々に増えて7床ある感染症病棟で対応しきれず、4月3日に感染症病棟を小児専用、一般病棟ひとつを成人のCOVID―19専用病棟にしました。重症管理は、救命救急センターの集中治療室を使いました。その間、院内イベントの中止、入院患者の面会禁止に加え、不足する個人防護具を職員が自作。また、入り口へのサーモグラフィー設置、一部の手術・検査等の延期、救急搬送以外の救急外来受診の制限、発熱外来の開始など、感染管理に取り組みました。
 4月7日に緊急事態宣言が出された後も患者数はしばらく増加し、4月中旬に23名とピークを迎えた後減少しました。感染終息かに思われましたが、7月の第2週より、再度入院患者が増え始めました。8月中旬現在、東京をはじめ大阪府や愛知県などでも第1波以上の多数の新規患者が確認されています。
 第2波当初、患者の6割程度は20~30歳代の若年層でしたが、徐々に高齢者が増えています。今月の当院の入院患者は15名前後で推移し、約半数は70歳以上と高齢者です。高齢者は経過が緩徐であったり、ADLの低下のため退院できなかったり、PCR検査がなかなか陰性化せずに施設や後方病院への引き継ぎができなかったりし、今後、病床運営や本来当院が担ってきた医療の継続が難しくなることが懸念されます。
 重症化予防などの治療手順やPCR検査への理解などは進んできましたが、病院経営などまだまだ課題は山積しています。我々ができることは辛抱強く一つひとつ解決しながら、当院なりにコロナ対策を含めた病院機能を維持することであると考えています。
 7月18日付けのThe Lancetに〝no more normal〟という社説が掲載されました。〝COVID―19が長期に及び貧困、教育、経済、保健医療体制など社会全体が大きな変動を起こし、コロナ禍以前に戻ることはできない〟と述べられていました。ウィズコロナを前提に、元に戻るのではなく、日々の試行錯誤の中から新しい医療体制を医療界から創っていければという願いの下、社会全体がワンチームになれればと希望します。

堺市立総合医療センター院長
大里 浩樹
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