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時の話題

保健所は公衆衛生行政の要

府医ニュース

2020年9月16日 第2940号

「健康危機管理の拠点」としての機能の強化・充実が求められる

 日本の公衆衛生行政は、昭和12年の(旧)保健所法、翌13年の厚生省(現厚生労働省)設置により体制整備された。戦後間もなくの22年に新たな保健所法が制定され、保健所は、健康相談や保健指導、更には医事、薬事、食品衛生、環境衛生など多岐にわたる行政機能を有し、地域における公衆衛生の向上および推進を図るための中心機関として位置付けられた。
 平成6年には、地域保健を巡る時代の変化に対応するために改正された地域保健法に基づく行政機関となった。また、同年の「地域保健対策の推進に関する基本的指針」の改正により、保健所の管轄する地域が二次医療圏、または介護保険事業支援計画に規定する区域とおおむね一致することが原則とされた。これによって、全国的に保健所と福祉事務所の統合が進められるとともに(保健福祉事務所等、統合組織の増加)、行財政改革や地方分権が進む中で県型保健所数が大幅に減少することになった。同時に、地方自治法改正による中核市制度の発足や地域保健法の改正に伴い、政令指定都市・特別区および政令で定める市に加えて、中核市も保健所設置が可能となり、都道府県以外の自治体が設置するいわゆる市型保健所数が増加した。
 更に同年に保健所法が改正され、地域保健法となったことから保健所の役割であった保健サービスの権限が市町村へと移譲された。それにより、保健所の主たる役割は、医療サービスや保健サービスを地域住民に直接提供することではなく、地域の医療機関、医師会や市町村保健センター等の活動を調整して地域住民に必要なサービスを提供する仕組みづくり、また地域における「健康危機管理の拠点」とされている。
 26年の地方自治法の改正により、中核市への移行要件が人口20万人以上に緩和されたこともあり、今後、更なる市型保健所数の増加が予想されている。一方、政令指定都市においては、区ごとに設置されていた保健所を1カ所に集約する市が増えるなど、近年の全国の保健所数は大きく変動し、機能は多様化している。
 大阪市においても保健所は、従来各区に設置されていたが、12年4月に1カ所に統合・集約化された。それに伴い従来の各区の保健所は、保健福祉センターとなった。保健福祉センターは、予防接種、健康相談、保健指導および健康診査、母子手帳の発行、乳幼児健診等、市民にとって身近で利用頻度の高い「対人保健サービス」の提供が主たる役割である。現在、県型保健所と市型保健所間、更には各市型保健所間においても地域によって保健所機能の違いや多様化が進んでいる。
 今回の新型コロナウイルス感染症に対して、地域における「健康危機管理の拠点」であるべき保健所が、機能不全を来した。近年、多発している自然災害、更には新型コロナウイルスのような新興感染症などに対して、保健所の更なる行政機関としての機能の強化・充実が求められる。