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医師・医療関係者のみなさまへ

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府医ニュース

2020年9月2日 第2939号

 ◆医師二人が逮捕された「ALS嘱託殺人事件」が報じられるや、安楽死・尊厳死を扱った森鴎外の「高瀬舟」が書店に並んだ。
 ◆雲仙普賢岳が噴火し、火砕流が生じた時には、200年前の同じ災害を描いた白石一郎の「島原大変」が話題となった。
 ◆未曽有の出来事が起きると、人は過去を参照しないではおれない。歴史に学ぼうとするのか、「過去にもあった」と安堵するのか。
 ◆コロナ禍のさなか、アルベール・カミュの「ペスト」が再ベストセラーとなった。医師の眼を通して描かれた作品であり、医師リウーや役人グランに共感を抱き、「ペストと闘う唯一の方法は誠実さだ」「自分の職務を果たすことだ」という言葉に力を得た人は多い。
 ◆国が打ち出す種々の政策に「誠実さ」は感じられない。過去はおろか、現実からすら「学ばない」。経済活動を優先したスウェーデンの惨状からも、感染制圧に成功し、他国に医療団を派遣するまでになったキューバからも。
 ◆「歴史は繰り返す」しかし「歴史に学ぶ」姿勢は失いたくない。(猫)