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時の話題

骨太の方針閣議決定

府医ニュース

2020年8月26日 第2938号

コロナ感染拡大防止と社会経済活動の両立

 政府は7月8日経済財政諮問会議で、今年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案を提示し、7月17日閣議決定された。骨太の方針は、今後の予算編成や税制改正の指針となるもので、小泉政権時代の平成13年から政府が毎年、来年度予算案編成に着手する前の6~7月に発表している。予算編成過程をそれまでの官僚主導から首相官邸が政治主導で行うことを目的に始まった。22~24年の民主党政権下で一時中断されたが、第2次安倍政権で復活した。
 今回の骨太の方針では、新型コロナウイルス感染対策を踏まえ、▽デジタル化の推進▽医療体制の強化▽雇用対策▽東京一極集中の是正――などが盛り込まれた。特にデジタル化は、今後1年間を集中改革期間と位置付けた。医療体制の強化については、PCR検査と抗原検査を組み合わせ、迅速かつ効率的な検査体制を構築。効果的な治療薬やワクチンの研究開発を加速し、国内の生産体制を早期に整備。デジタル化は、内閣官房に民間専門家と関係府省庁を含む新たな司令塔機能を持たせ、すべての行政手続きを見直し、オンライン化・ワンストップ化・マイナンバー制度の改善を行う。更にオンライン診療を推進するために、電子処方箋・オンライン服薬指導・薬剤配送によって、診察から薬剤の受け取りまでオンラインで完結する仕組みを構築することを明記した。
 今回、時限的・特例的措置として初診も含めたオンライン診療の全面解禁もなされたが、時限的措置の効果や課題等の検証について、「受診者を含めた関係者の意見を聞きエビデンスを見える化しつつ、オンライン診療や電子処方箋の発行に要するシステムの普及促進を含め、実施の際の適切なルールを検討する」とした。電子処方箋に関しては、令和4年夏を目途に運用を開始する考えが示された。書面・押印・対面を前提とした制度や慣行を見直し、原則として不要とする。また、①医療・介護分野でのデータ利活用やオンライン化の加速②テレワークの定着・加速を図るため、新たな評価指標の策定③兼業・副業の促進など、多様で柔軟な働き方を自由に選択できるような環境の整備④東京一極集中を是正し、政令指定都市や中核市などを中心に街全体をITでつなぐスマートシティーの推進⑤魅力的な地方大学を実現する改革パッケージ――を年内に策定する。なお、これまで部品の調達・供給を中国などの特定地域に依存することにより、有事の際に企業活動に多大な影響が出ることから、国内外のサプライチェーンの多元化・強靭化を行う。一方、焦点であった後期高齢者の医療費負担の引き上げは、先送りされた。今後、12月には与党税制改正大綱と政府予算案が決定される予定である。
 このように国は、医療のデジタル化を強力に推進することにより、合理化、利便性が向上するものと期待している。実際、昨今のICTの進歩は目覚ましく、医療提供体制に寄与する部分は大きい。しかし、効率化を急ぐがあまり、医療の安全性が蔑ろにされることのないよう医療の専門団体である医師会は、国に提言していかなければならないと考える。