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医師・医療関係者のみなさまへ

第3回 新型コロナウイルス対策研修会

府医ニュース

2020年8月26日 第2938号

インフルエンザ流行期への対策を ―大阪府医師会ホームページで動画配信―

 新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)は、収束に程遠い状況である。我が国でも、6月中旬より東京を中心に若年層からの感染が増加。大阪では7月後半から200人前後の感染者数が報告され、更に幅広い年代に感染が拡大しつつある。こうした中、大阪府医師会は8月7日午後、第3回「新型コロナウイルス対策研修会」を開催。インフルエンザ流行期を控え、医療崩壊を食い止める必要性を確認した。なお、今回も前回と同様に感染防止のため聴講者を入れず、当日の模様を府医ホームページで配信した。また、この日は在阪のテレビ局・新聞社など多数のメディアが取材。研修会終了後に記者会見を行った。

 茂松茂人会長はあいさつで、受診抑制により医業経営が苦しい中、感染予防を行いながらの診療に感謝を述べた。また、感染収束には「感染者の早期発見と隔離」が必須であるが、保健所機能が強化されていない現状に苦言を呈した。その上で感染者が増えている今、公的・公立病院にPCR装置を導入して検査体制を拡充するなど、何らかの対策を取らねばならないと力を込めた。
 次に、宮川松剛理事から府医の取り組みとして、軽症者入所ホテル・PCR外来への出務協力や、国などへの要請事項を説明。なお、医療従事者への慰労金など「新型コロナ緊急包括支援交付金」の申請が開始されており、医療機関とスタッフを守るため融資制度も含め活用されたいと力説。今後、インフルエンザ流行時の発熱患者への対応の検討が重要と述べ、PCRの行政検査(集合契約)にかかる契約書案にも言及した。

感染者増加の中 死亡者数は低下

 続いて、朝野和典氏(大阪大学医学部附属病院感染制御部教授)が「新型コロナウイルス――現状と今後の対応」と題して講演。朝野氏はまず、新型コロナ感染者が増加する一方、死亡者数は減少している現状を報告し、その要因に▽医療提供体制の拡充▽治療の最適化▽新規薬剤の効果▽高齢者などの自衛的外出自粛▽全体の感染対策の効果――を挙げた。なお、死亡者はほぼ60歳以上であり、80歳以上が感染すると3割近くが亡くなると述べた。第2波の感染者の特徴は、若年層が中心だが40~50歳代も増加傾向にあると説明。重症者も徐々に増える中、重症者向け188病床は実際調整が難しいと危惧。大阪府が進める「大阪コロナ重症センター(仮称)」の整備も医療従事者の確保が課題とした。
 また、7月12日以降の大阪府の重症者・死亡者の年齢分布では、50~70歳代が多く、大半が男性、つまり働き盛りの年齢層の方が感染すると重症化の可能性があると詳説した。なお、現在のPCR検査数が少ないのは事実で、有症状者が遅滞なく検査を受けられる体制が望ましいと断言。無症状者の検査よりも有症状者の検査が遅れないことが優先されるとし、現在の2500件の検査体制は維持する必要があるとした。

インフルエンザ流行期への対応

 更に、インフルエンザ流行期の対応も説示。インフルエンザは高齢者や呼吸器合併症を有さない場合にはほとんど自然治癒するため、治療を行わないか、または経験的に行うかを選択し、その上で「初診時に唾液を採取し、新型コロナの検査を行う」「3日以上発熱が続けば帰国者・接触者外来を受診させる」ことが考えられるとの見解を示した。
 今後、診療の改善に必要な開発などとして、▽唾液でのインフルエンザ検査▽自己採取式鼻腔ぬぐいの有効性の検証▽クリニックで迅速検査が可能な検査キットの開発▽高感度の抗原検査▽簡便かつ短時間のPCR検査機器――を挙げた。特に唾液でのインフルエンザ検査がもし可能になれば、新型コロナと両方の検査を同時に施行できると強調した。
 最後に、ポビドンヨードのうがいの有効性に触れ「科学的な根拠のある結果は得られていない」と結んだ。