TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

第1回学校保健講習会

府医ニュース

2020年8月19日 第2937号

小児の眼炎症疾患などを解説

 大阪府医師会学校医部会は7月1日午後、第1回学校保健講習会を府医会館で開催。新型コロナウイルス感染症の影響を考慮して延期した「令和元年度第4回講習会(3月18日開催分)」の内容で実施した。なお、今回は感染防止対策の一環として当日の動画を府医ホームページ(「医師・医療関係者のみなさまへ」「学校医部会」)で公開している。
 はじめに森口久子理事があいさつ。従来は多数の参加者を得て情報共有を図っており、今回のコロナ禍でかなわなかったことに遺憾の意を示しつつ、聴講者なしで開催に踏み切ったことへ理解を求めた。また、児童・生徒が安全に学校生活を送るためには、学校保健の役割が重要であり、本講習会がその一助になればと期待を寄せた。
 続いて、宮浦徹氏(府医学校医部会常任委員)が座長を務め、丸山和一氏(大阪大学眼科学教室准教授)が「小児の眼炎症疾患について」と題して講演。眼は身体症状の様々な所見が現れる「体の窓」だとし、学校健診等でも注意深く診察してほしいと呼びかけた。また、自身の臨床経験として18歳未満のぶどう膜炎から、▽ベーチェット病▽若年性特発性関節炎▽サルコイドーシス▽サイトメガロウイルス網膜炎――などを診断したと報告。具体例を示しながら、主要な所見や治療経過等を解説した。更に、原因不明の小児のぶどう膜炎に言及。成人のぶどう膜炎とは反応が異なり、病態の複雑性や薬剤の選択が難しいなどの課題を挙げ、「小児科と連携して診察することが大切」と加えた。丸山氏は、アレルギー性結膜炎にも触れ、目のかゆみから症状悪化につながる「目のかゆみループ」を説明。新たな提案として「リアクティブからプロアクティブへ」と述べ、洗眼や点眼の指導法などを詳説した。
 次いで、森口理事の座長の下、亀田誠氏(大阪はびきの医療センター小児科主任部長)が「食物アレルギー治療のパラダイムシフト」として講演した。亀田氏はまず、食物アレルギーのリスク因子を指摘。アトピー性皮膚炎(湿疹)の存在を挙げ、「皮膚炎はしっかりコントロールする必要がある」とし、湿疹への介入を一次予防のポイントとした。次いで、二次予防の観点から感作症例でのデータを紹介。落花生と鶏卵においては感作があるだけでは除去せずに、早期の摂取が有効と述べた。更に三次予防として、原因食材であっても「必要最低限の除去」とし、食物アレルギー発症後も「可能な範囲での摂取には意味があると考えられている」と提示。食物アレルギーの治療は、原因の除去を主とする従来の手法から、「必要最小限の食物除去」へと転換期を迎えていると締めくくった。