TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

本日休診

小さな政府(3)
――補償なき自粛

府医ニュース

2020年8月5日 第2936号

 4月16日、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、政府は新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を全都道府県に拡大した。経済的打撃が大きいとして全国への拡大には慎重論があったが、感染爆発への危機感から首相が決断したと言われている。4月20日には、迅速かつ的確に家計への支援を行うことを目的として「特別定額給付金」事業を閣議決定。そのほかにも様々な経済対策がなされた。
 しかしながら、国内企業の99%を占め、雇用の7割を担う中小企業の倒産数は増えている。一方、医療現場では感染予防による受診抑制が問題となった。更に、当院では、感染第1波が収まった6月の時点でも、土日の内服を抑制してなんとか自己負担による家計圧迫を防ごうとする患者が出てきた。つまり、経済的理由による受診抑制である。
 7月末現在、東京と大阪を中心に、感染第2波が始まっている。現時点で政府は緊急事態宣言を出す様子はない。前回の感染拡大に対応した補正予算案も、1次と2次合わせて200兆円を超えるとされるが、実際の財政支出である真水の部分は少なかった。現状では政府支出を渋っているために、緊急事態宣言が遅れているように思える。
 補償なき民間の自己防衛が続けば、今冬には大流行期を迎え経済的打撃を受けた国民と医療機関の悲惨な状況が想像される。経済を止めると国民の生活が破壊されるというなら、政府は、減税と真水の経済対策をセットに行うべきだ。政府支出を行わず、国民や中小企業の自己責任で生き残るよう迫るやり方は、新自由主義特有の小さな政府の典型といえるだろう。
(真)