TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

本日休診

小さな政府(2)
――緊縮が前提

府医ニュース

2020年7月1日 第2933号

 新聞報道によると、国立大学の債券の発行条件が緩和されたことを受け、東京大学が大学債を初めて発行するそうだ。東大は去年、既に格付投資情報センターから日本国債と並ぶ発行体格付け「AAプラス」を取得済。概ね、投資家の間では歓迎する向きがあり、他の国立大学も東大に続くことが期待されている。
 私にはこの流れが、マーケットに教育が放り込まれ資本家に食い物にされるように見える。本来、国立大学への資金投入は国家が行うことではないのか。別の報道によると東大の担当者は「日本は大学に投資できる財政状況にない」と語ったという。
 同じく、社会的共通資本である医療でも、自助努力を求められて久しい。大阪府内で実際にあった、救命救急センターの医療従事者の人件費や、周産期医療センターにおける保育器購入費のクラウドファンディングがそれにあたる。そもそも、診療報酬や公的な資金注入が十分でなかったために起こったことである。
 緊縮財政主義を取るあまり、行政は無駄を省けとばかり、短期的に結果の出ない教育・研究や、平時の安全保障である医療に対して資金を出さなくなった。いわゆる「小さな政府」政策である。一方で金のなる分野には公的資金を投入し、規制も緩和する。
 この10年間、同じ問題に警鐘を鳴らし続けてきたのだが、驚くことに、当時「こんなこと起こるわけないだろ」という身近な読者からの感想が、今は「もう当たり前なのだから仕方ないだろ」に変わってきたのだ。行政がその業務を縮小した先にあるのは、自助努力しかなくなるのに、医療者の間でもそれが当たり前になってしまっている。緊縮思想が浸透した結果である。(真)