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医師・医療関係者のみなさまへ

勤務医の窓

緊急事態宣言に思うこと

府医ニュース

2020年6月24日 第2932号

 令和2年4月7日に発令され、一度は延長された緊急事態宣言が、期限とされた5月末を迎える前に解除されました。
 6月15日現在、日本国内での新型コロナウイルス感染症(COVID―19)累計患者数1万7429名、死亡者925名(クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の乗員、乗客を除く)と数多くの尊い人命が失われました。お亡くなりになられた方々には、心よりお悔やみ申し上げますとともに、治療中の皆様には一日も早い回復をお祈りします。
 日本が欧米諸国と比べ人口あたりのCOVID―19による死亡者数が明らかに少ないことは紛れもない事実です。医療機関のみならず、保健所や国民一人ひとりの努力の結果だと思います。新型コロナ疑い患者のたらい回しや、感染症指定病院での患者集中など問題点が残されましたが、全国規模での医療崩壊を来すことなく、何よりも医療従事者の感染を最小限に抑えられたのではないでしょうか。そして、5月に入り新規患者の発生数が減少傾向を示し、緊急事態宣言の段階的な解除につながりました。
 以前、マスク未装着の乗客が咳をしたので、隣の乗客が電車の非常停止ボタンを押したとの報道を目にしました。また、発熱で出社を控えていた会社員が「出社するには、新型コロナの陰性証明を持参するように」と言われたとの話も聞きました。当院でも「新型コロナ陰性証明」発行の問い合わせが多数あります。そして何よりも、医療従事者が心ない言葉を浴びせられた話も聞きました。このような悲しい出来事は、国民に正しい知識が伝わっていないことから生じるのではないでしょうか。
 目に見えないウイルスに対する恐怖心は誰もが感じて当たり前です。COVID―19に対する正しい知識・情報こそが人々を不安から解放できると信じます。首相官邸のホームページにはCOVID―19の正しい対処法や客観的な事実が掲載されています。言論や報道の自由は保障されるべきですが、国民に不安や誤解を与える報道の在り方はいかがなものでしょうか。
 今後、第2波が発生するかは分かりません。その時には、これまでに蓄積した英知を結集させ、更なる難局を乗り切ることが必要です。そして、どん底に落ち込んだ経済を再活性化させることが大きな課題となるでしょう。「新型コロナとの戦争」と言われますが、この戦争は人間同士が殺し合う戦争ではありません。人類が協力して戦う戦争です。人々の協力関係が継続することを祈ります。

北野病院副院長・小児外科主任部長・医療の質管理本部長
佐藤 正人
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