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医師・医療関係者のみなさまへ

勤務医の窓

新型コロナウイルス感染者の皮疹対応を考える

府医ニュース

2020年6月17日 第2931号

 若干下火になったとはいえ、新型コロナウイルス感染症(COVID―19)の世界的な蔓延が続いている。本稿を執筆中の今、大阪府でもまだ緊急事態宣言が発令中である。
 全国の他の主幹病院同様、当大学附属病院でも救急医療部、総合診療科が前面に立ったCOVID―19疑い患者への対応に日々追われ、COVID―19以外の受診患者への電話診療の開始、会計手続きの一部変更、各種検査や手術の制限など診療体制の見直しが行われている。私は皮膚科医であるが、COVID―19との接点が比較的少ない当科でも毎日担当者を決めて、当科通院患者のCOVID―19対応など後方支援活動に協力している。
 最近、COVID―19患者に、ウイルス感染に関連するとされる様々な皮膚症状が生じることが報告されてきている。皮疹の出現時期は診断3日前から診断13日後までと様々で、所見は中毒疹様、蕁麻疹様、凍瘡様、紫斑など多様である。そのほとんどは10日以内に消失するようで、感染の重症度と皮膚症状の関連は不明である。ウイルスに対して皮膚に生じる種々の免疫反応や血管障害が皮膚症状発症の機序として推測されている。
 ただ、COVID―19にみられたと報告されている皮膚症状は薬疹、膠原病、皮膚血管炎など、COVID―19とは無関係に皮膚科診療ではしばしば経験するものである。先日も、高熱および皮疹でCOVID―19の可能性が否定できないのではということで、他科からの紹介で皮膚科受診となった男性患者を診察する機会があった。皮膚科的には典型的なカポジ水痘様発疹症(皮膚への単純ヘルペスウイルス感染症、しばしば高熱を伴う)であったが、皮疹プラス発熱の症状が即COVID―19疑いとして扱われ、多くの患者が皮膚科を受診することとなれば、皮膚科診療が大混乱に陥るのは明らかである。医療従事者の安全性の確保、医療資源の節約のためにも、各医療施設内での感染症外来、感染症病棟と皮膚科外来とのウェブを通じた皮膚症状の評価システムの確立・充実や、国によるウェブ診療の積極的な推奨が必要な時代が来ているのかもしれない。

大阪医科大学医師会長
森脇 真一
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