TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

時事

「新しい生活様式」下の介護予防

府医ニュース

2020年6月17日 第2931号

地域の通いの場の〝再起動・つなぎ直し〟

 5月29日、厚生労働省から「新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に配慮して通いの場等の取組を実施するための留意事項について」および、同「介護予防・ 見守り等の取組例について」事務連絡が行われた。背景には、外出自粛の長期化による、高齢者の閉じこもりや健康への悪影響の懸念がある。
 前者では、3密の回避、マスクの着用、手洗い、最低1㍍の距離を空ける、消毒、1時間に2回以上の換気などの一般的留意事項とともに、歌を控える、大声を出す機会を少なくする、息が荒くなる運動は避ける、マスクを着けて運動する場合は負荷を下げたり休憩を取る、屋外で十分な距離(2㍍以上)の場合はマスクを外す、飲食は対面を避け横並びで座り、個別の配膳や個別包装の茶菓を用いる――などを示した。
 後者では、転倒予防に向けた運動、免疫力の低下につながる低栄養の予防、心身の健康維持のために孤立を防ぐことが重要として、地域の様々な力を借りつつ「地域の通いの場等の再起動・つなぎ直し」が不可欠と謳った。そして具体的な取り組み例に、(1)気分の落ち込みや意欲の低下、生活機能や認知機能の低下がみられる高齢者の早期把握(2)ウェブ会議システム等の新たな手法による地域ケア会議の実施(3)民間事業者と連携した見守りの再起動・強化(4)ボランティアが参加者宅を巡って声かけを行う「こんにちは! 通いの場」事業(5)テレビ電話を活用し声かけ・体操等を実施するバーチャル通いの場(6)通いの場に箱を設置し参加者が「元気ですカード」を投函する「元気な声を届けよう」事業(7)通いの場参加者が自宅でマスクを作成し応援メッセージを添えて配付する介護事業所・地域応援プロジェクト(8)自宅の庭等の屋外で短期集中予防サービスを実施する「お外でサービスC」事業(9)生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)等がセルフケアの好事例を紹介する「『頑張っている』取組を応援する普及啓発リレー」事業――を挙げた。
 〝再起動〟〝つなぎ直し〟といった、ある意味では大仰な言葉づかいに、危機感が読み取れる。
 国立長寿医療研究センターが高齢者を対象に実施した調査では、COVID―19の感染拡大前後で、1週間あたりの身体活動時間は約60分(約3割)減少しており、今後の要介護高齢者の増加の可能性が指摘されている。
 同センターが5月27日に公表した「在宅活動ガイド2020 一般高齢者向け基本運動・活動編」(https://www.ncgg.go.jp/hospital/guide/)は、①以前に比べ歩く速度が遅くなってきた②6カ月間で2~3㌔以上の体重減少がある③もの忘れが気になる――の3つの質問に答えることで、「バランス向上」「体力向上」「摂食嚥下改善」「栄養改善」「不活発予防」「コグニ」の6つのパックのうち、適したものが選ばれる仕組みになっている。
 これからの介護予防には、過不足のない感染対策と、安全な運動のために、かかりつけ医による噛みくだいた説明やアドバイスなどの支援が求められる。
(学)