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医師・医療関係者のみなさまへ

緩和医療に関する研修会(シリーズ⑪)

府医ニュース

2020年6月3日 第2930号

患者や家族に寄り添ったケアが大切

 令和元年度緩和医療に関する研修会が2月12日午後、大阪府医師会館で開催され、医師・医療従事者など約60人が聴講した。
 本研修会は、在宅医療における緩和医療体制の構築を目指し、平成26年度より府医主催で実施。通算11回目となる今回は、2題の講演を行った。
 大平真司理事の座長の下、はじめに中尾正俊副会長があいさつ。緩和ケアは「病気が診断された時から始まる」とし、身体的な痛みだけでなく、心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し、的確に対応することが重要と述べ、本研修会が日常診療の一助になればと期待を寄せた。
 まず、池永昌之氏(淀川キリスト教病院緩和医療内科・ホスピス部長)が「緩和医療における病診連携について(病院の立場から)」と題して講演。がん診療連携拠点病院における緩和ケアの位置付けや取り組みを紹介した。また、緩和ケアにおける地域連携の課題として、拠点病院に集約化された患者が地域に戻る際に十分な連携が取れていないこと、がん患者の終末期医療に関して介護・福祉関係者にも普及啓発・教育が必要なことなどを挙げた。
 次に、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)について言及。池永氏は、人生会議とACPの概念は少し異なると述べ、人生会議は国民全体が自分の価値観・人生観について話し合うのに対して、ACPは人生の最終段階を考える時期にある人や、「この患者さんが1年以内に亡くなっても驚かない」と医療者が考える時期にある人が、医療・ケアの目標や具体的な内容について事前に話し合うものであると指摘し、その重要性を強調した。最後に、人生の最終段階では「最後の数時間に起こったことが、残される家族の心の癒しにも悲嘆の回復の妨げにもなる」というシシリー・ソンダース(英国ホスピスの創始者)の言葉を紹介。緩和ケアは患者だけでなく、残される家族のためにも大切であるとし、「がんを恐れない社会を作っていくこと」が最終目標だと締めくくった。
 続いて、原聡氏(原クリニック院長)が「緩和医療における病診連携について(診療所の立場から)」をテーマに登壇。在宅医療に関するニーズを紹介した上で、家族への負担や急変時の対応、往診可能な医師の少なさなどを課題として挙げた。また、自院での在宅診療へのアプローチとして、紹介元病院(がん専門病院・地域基幹病院)から緩和ケア外来などを通じて、在宅診療へつなぐ流れを説明。自身が考える在宅医の役割は、症状の緩和だけでなく、患者・家族に寄り添う伴走者として、「家族の覚悟を支えることである」と述べた。更に、河内医師会の在宅医療におけるICTの取り組みを紹介。医療・介護サービスの一体化や専門医療機関からの情報共有、患者・家族への医療・介護連携の可視化、地域のネットワーク作りなどの可能性に言及した。また、多職種協働における医師の役割は、「相手の専門性を十分に理解して、お互いに尊重し合うこと」だと結んだ。