TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

本日休診

小さな政府――医療を寄付でという美言

府医ニュース

2020年6月3日 第2930号

 最近、公的医療機関が物品購入費や人件費をクラウドファンディングで募るというニュースを見かけるようになった。今回の新型コロナ禍でも、医療物資が現場に届かず、それに対し行政の長が寄付を呼びかけるというニュースが報道されている。確かに寄付は、行為者の善意に対し当事者は感謝の気持ちを抱き、その両方の気持ちは尊いものだ。しかし、そもそも、従来なかった「混乱する医療現場に対して為政者・当事者が民間に寄付を要請する」という背景はどこからくるのだろうか。
 日本医師会「PCR検査実態調査と利用推進タスクフォース」が5月の中間報告を出した。そこには「緊急事態が繰り返し発動され、社会経済が疲弊することを防ぐためにも、医療や介護施設などのハイリスク群を保護しつつ、社会経済活動への参加の指標として、PCR検査や(免疫)抗体検査を参考とすることが望ましい」とし、「COVID―19と共生していく上で、PCR検査は医療と社会経済を維持するための社会的基盤であると認識する必要がある」と提言。更にPCR検査が「進まなかった最大の理由」は「全く財源が投入されていないため」であり、「地方自治体を始め個々の医療機関、企業の自主的努力にゆだねられて来た」と述べられている。
 平時と今回の緊急事態で共通することは、医療への緊縮政策が現場を停滞・混乱させてしまったということ。今回、特に大阪では、庶民の寄付行為が大きなうねりとなった。医療は平時から寄付で支え、緊急時にそれを拡大させるという流れが想像できる。コロナ禍が落ち着いた後も、国民の善意に頼るような「小さな政府」政策を、行政が更に推し進めないか警戒が必要であろう。
(真)