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医師・医療関係者のみなさまへ

先進医薬研究振興財団「市民公開講座」

府医ニュース

2020年5月20日 第2928号

人生100年時代の医療・ケアを考える

 先進医薬研究振興財団の主催、大阪府医師会・大阪府看護協会の後援による市民公開講座「人生100年時代の生き方、自身の医療・ケアを考える」が2月15日午後、グランフロント大阪で開催され、府民ら約300名が参加した。

 開会にあたり、和田邦義氏(同財団理事長)があいさつを行い、同財団の概要などについて説明を行った。
 続いてあいさつした堀正二氏(大阪国際がんセンター名誉総長/大阪大学名誉教授)は、平均寿命と健康寿命の差に言及。我が国では寝たきりになる期間が長いとし、元気に長生きするにはどうすればよいかと問題提起した上で、今回の講座で取り上げる笑いの体操などを実践してほしいと呼びかけた。

こころとからだを癒す笑いの効果

 続いて、「笑いと医療――こころとからだを癒す笑いの効果」と題して、大平哲也氏(福島県立医科大学医学部疫学講座主任教授/大阪大学大学院医学系研究科招へい教授)が講演を行った。大平氏は、笑いの定義や効果などについて説明した上で、笑いヨガ(Laughter Yoga)を紹介。笑いの体操とヨガの呼吸法をミックスしたもので、笑いが主体であり、誰でも笑うことができることが特徴であるとした。加えて、笑いによるうつの改善効果や運動効果などに触れ、「笑う門には福来たる」と締めくくった。

人生会議(ACP)の必要性や効用を解説

 次に、「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)について」をテーマに、三浦久幸氏(国立長寿医療研究センター在宅医療・地域医療連携診療部長)が講演。三浦氏はまず、人工栄養法導入の方針決定の際に医師が困難を感じることが多く、また、その原因としては「本人意思が不明」が最も多いと指摘。その上で、エンディング・ノートや事前指示書では、内容が曖昧で問題となる事例があるなどとして、ACPの必要性や効用を解説。人生の最終段階の医療における世界的な潮流は、「本人と医療・介護専門職が共に協働して本人の望む医療や介護を実現すること」と力説した。

かかりつけ医の重要性を訴える

 その後、堀氏を座長とし、三浦氏、茂松茂人氏(府医会長)、高橋弘枝氏(大阪府看護協会会長)、野口一郎氏(大阪市老人クラブ連合会理事長)により討論を展開。その中で茂松・府医会長は、かかりつけ医の役割・重要性を説きながら、患者に寄り添って相談に対応する医師であるとし、「ぜひ、かかりつけ医を持ってほしい」と呼びかけた。併せて、府医において、かかりつけ医のスキルアップを図るために研修会を開催していることを紹介。その他、超高齢社会における健康寿命延伸の重要性、医師と看護師をはじめとする多職種連携の必要性を述べるとともに、医療費削減を目論む国の施策に危機感を表明した。