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医師・医療関係者のみなさまへ

時の話題 

新型コロナウイルス感染者増加

府医ニュース

2020年5月6日 第2927号

今、医療に求められること

 新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない状況で、各地域の病院で院内感染と考えられるケースが増加している。当該病院は、外来、新規入院を休止し、濃厚接触者とされる職員は2週間の自宅待機、健康調査が行われる。更には社会問題化している、病院や職員およびその家族に風評被害が及ぶ現状では、地域の医療機関が萎縮医療に傾いている。
 このような状況下、発熱等の新型コロナウイルス感染の疑いのある患者の救急受け入れ拒否が報道されている。最後の砦とされる三次救急医療機関では、重度のコロナウイルス感染患者を受け入れるために、通常は受け入れている重症の交通外傷などの救急患者の受け入れを制限せざるを得ない状況となっている。感染経路が不明な患者が増加し、いまだ有効な治療法やワクチンがなく、迅速にPCR検査が行えない状況では、特に民間の医療機関では医療従事者に余裕がないため、院内感染防護の体制も逼迫して地域医療も危機的状態となっている。
 現在、大阪府内では約270の医療機関が救急告示医療機関として指定されているが、その多くは府内の二次救急医療を担う民間病院である。当然、すべての医療機関が無条件に新型コロナウイルス感染者を受け入れ可能な体制をとっている状況ではなく、受け入れ可能な医療機関は限定される。本来、感染症対策は政策医療であり、公立病院が主体となり自治体が積極的に関わるべきと考える。今までの長期にわたる公衆衛生機能の抑制や医療の抑制・削減によりそれができないとすれば、医療機能を集約しそこへ資源を投入すべきである。
 現在、感染経路が分からない事例も急増し、市中感染が広がっているため入院可能病床が逼迫してきている。
 大阪府ではその対策として、引き続き府民の外出の自粛を要請するとともに、PCR検査陽性者を、重症者・中等症者・軽症者および無症状者にトリアージし、重症者・中等症者を特定の医療機関に集約することで死亡率を下げ、更には一定期間診療を行った軽症者および無症状者を府内の協力を得られた宿泊施設に転入していただくことにより、新しくコロナ陽性者用の病床を確保することとしている。宿泊施設では十分な健康管理を行うことにより、必要に応じて、受け入れ可能病院への搬送を行っている。
 大阪府医師会においても大阪府からの協力要請により宿泊施設での日中常駐、夜間オンコールで対応する支援、更にはドライブスルー・ウォークイン方式でのPCR検査への出務を開始した。これはあくまで、かかりつけ医からの紹介を中心にしたPCR検査としている。国民・府民の命と健康を守るため、医師会挙げて社会的使命として取り組んでいかねばならないと考える。
 新型コロナウイルス感染症対策の長期化が予想される中、治療薬、ワクチン、抗体検査の開発が待たれるが、現時点で急務とされるのは、医療崩壊を来さないために、必要な検査(PCR検査)・亡くなられる方を少しでも減少させる医療への円滑なアクセスを可能とする医療体制の構築と考える。医療従事者が一団となって活動していくべきである。