TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

新型コロナ感染拡大を受け茂松会長が情勢報告②

府医ニュース

2020年5月6日 第2927号

長く厳しいウイルスとの闘い会員が一丸となって乗り切る

 大阪府医師会では、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、会議・委員会等を中止・延期しており、原則毎月第4金曜日に開催している郡市区等医師会長協議会についても3月度より中止。その結果、本紙第2925号(令和2年4月22日付)で報告したとおり、茂松茂人会長のあいさつによる情勢報告が滞る状態となっている。
 新型コロナウイルス感染症の拡大は収束の見通しが立たず、政府が5月6日としている緊急事態宣言の期限延長が取り沙汰されている。そうした状況を受け、本号においても茂松会長による情勢報告を掲載。府医の取り組みや今後の方針などについて説明することとする。

日々の診療に携わるすべての会員に敬意

 新緑が鮮やかな季節を迎えている。街頭ではハナミズキやツツジの花が色鮮やかに咲き誇っている。しかし、新型コロナウイルス感染症の収束の見通しは全く立っていない。4月7日に、7都府県を対象に発令された緊急事態宣言の対象が更に全国に広がり、国民には不要不急な外出の自粛が求められている。
 このように、新型コロナウイルス感染症の拡大に不安を抱えながら重症感染者の治療に携わる先生方、また院内感染に細心の注意を払いながら日々の診療に携わるすべての会員の先生方に敬意を表する。
 昨年末に中国で始まった感染者数は、今や全世界で310万人を超え、死者は21万人を超えている(4月29日現在)。感染は瞬く間に中国から東アジア、中東、欧米、更には全世界に広がった。未経験のウイルスへの対応ということもあり、各国とも手探りで対策を講じている。発生源となった武漢に見られるように、都市の封鎖を行い、感染の封鎖を強引に行った国もあれば、韓国のようにPCR検査をドライブスルーなどで徹底的に実施して、陽性者を隔離していった国もあり、こうした国では、一定収束の方向に進みつつあるようだ。
 また、医療崩壊を招いたイタリアやスペイン、更には最大の蔓延国となった米国でも、厳しい行動制限が加えられたことにより、4月中旬以降、ようやく新たな感染者数や死亡者数がピークを越えたようである。

各国で活動再開の動き感染の再燃を危惧

 一方、我が国では、緊急事態宣言が発せられてほぼ1カ月が経過し、一定、感染の拡大に歯止めがかかってきたようだが、収束を見通せるような段階ではない。検査の陽性率や死亡者数が増加する中、緊急事態宣言の解除は、自粛効果の検証を踏まえて、また経済活動にも目配りしながら検討される見込みだが、政府が定めたゴールデンウィーク明けから、更に先延ばしとなりそうな情勢である。
 新聞報道によると、このように新型コロナウイルス感染症の拡大防止に追われる我が国とは対照的に、米国やドイツのように、経済活動の一部再開に踏み切る動きもある。行動制限による国民の不安が、自身の大統領選に不利に働くことを恐れたトランプ大統領は、感染者の少ない地域から段階的に経済活動を再開する方針を示しているが、経済活動の再開を焦るあまり、感染を再燃させるのではないかと危惧される。
 その一方で、EUは、経済活動の再開に踏み切る条件として、①感染拡大の鈍化②大規模な検査能力の拡充③十分な医療体制――の3つを掲げており、中でもドイツは、「再生産数」(1人の感染者が何人に感染させるかを示す値)を重視し、感染が収束に向かう1未満に保てるかどうかを基準に、規制の緩和・強化を判断する方針で臨んでいるようである。ドイツと我が国との大きな違いは、PCR検査の実施能力にあり、我が国はドイツやアメリカ、韓国と比べても圧倒的に検査数が少ないと伝えられている。
 我が国では、検査対象を絞って、感染者数が医療機関の収容能力を超えないよう制御しているとも推察され、見方によっては一定の成果を挙げてきたと言えるのかもしれない。
 しかし、一方で、かかりつけ医の立場から強く感じるのは、症状のある患者が来院し、診察の結果、検査が必要と判断しても、なかなか検査につながらないことである。必要な医療が受けられないことによって、患者に無用の不安を与えていることを憂慮している。

医師会が責任をもって検体採取行う体制整備

 本紙第2925号でも触れたが、医療現場の危機的な状況を踏まえて、本会は軽症者や無症状者への医療提供体制となる「宿泊療養」や「PCR検体採取外来」に、行政と連携して積極的に取り組む方針を固めた。この間、行政側との調整を図りながら各地区医師会にも出務医師の派遣を依頼した。
 特に、感染経路が不明な症例が急増していることを踏まえて、PCR検査体制の拡充を行政側に強く求め、車に乗ったまま検査が受けられるドライブスルー方式の検査所を設置させ、緊急事態宣言が解除されるまでの間、我々医師会が責任をもって検体採取を行う体制を整備した。検体採取のたびに消毒作業が必要な建物内での実施に比べて、効率的により多くの検体採取が行えるというメリットがある。当面は、府医役員が交代で出務し、その後、地域の先生方にバトンタッチしたいと考えている。

感染を疑う場合には確実に検査につなげる

 あくまでも新型コロナ受診相談センターへ相談し、症状から新型コロナウイルス感染症が疑われる患者のうち、保健所が検査を必要と判断した場合となっているが、行政側との協議の中では「かかりつけ医が感染を疑う場合には、確実に検査につなげること」の申し合わせを確認しており、仮に不適切な事例が生じた場合には情報提供をお願いしたい。
 また、メディアでも伝えられるように、日本の検査体制は非常に脆弱であり、まだまだ整備・拡充していく必要がある。今後も各地域で条件が整うようであれば、地域の実情に即した体制を構築できるよう調整したいと考えている。その他、軽症者や無症状者の自宅療養には限界があるので、宿泊施設での療養の拡充にも鋭意取り組んでいる。

感染者の受入専門病院増加が今後の課題

 また、院内感染で病院の機能を停止せざるを得ない状況を考慮して、行政に対しては感染者の受入専門病院の必要性を主張してきたが、大阪市の英断により十三市民病院が指定されることとなった。公立・公的な病院を中心にこうした専門病院を増やしていくことも、今後の大きな課題だと考えている。
 このウイルスとの闘いでは、いったん感染のピークが過ぎ、収束の兆しが見えたとしても、第二波、第三波の感染拡大も予想される。今後も長く厳しいウイルスとの闘いが続くと思うが、会員が一丸となり「ワンチーム」で乗り切っていきたいと考えているので、引き続きのご支援、ご協力をお願いしたい。

最後に

 多くの医療関係者が新型コロナウイルスという、かつて経験したことのない過酷な感染症との闘いに多大な犠牲を払い、苦労をいとわず立ち向かっておられる中で、医療とは全く関係のないレベルで本会執行部を批判する情報が一部流布されているが、このような情報は全くの事実無根であることを申し添える。