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クラウド運用の問題点

府医ニュース

2020年4月29日 第2926号

 医療系ポータルサイトでクラウド電子カルテの広告を最近よく見る。様々なデータが日常的にクラウド保存される昨今、私自身もクラウド保存への抵抗は薄れている。むしろPC内の容量省略となり助かる部分もある。紙カルテの保管と比較すれば非常に魅力的と言える。
 個人情報流出への懸念も言われているが、データは圧縮・暗号処理され国内サーバで保管、さらに様々な対応もされている。何より、災害時に役に立つという声もある。政府が医療のICT化を推進していることより、これからの流れに乗るべく医療データのクラウド化を先取りしなくてはいけないという向きも理解できる。
 さて、話題のクラウド電子カルテであるが、どうもその正体は、データ保管のクラウド化だけではないようだ。先月、複数の医療機関で、あるクラウド電子カルテの過大なサーバ負荷が発生、入力が遅くなり診療に支障を来したとの情報が会員から寄せられた。このことは、同カルテがクラウド保管のみならず、クラウド上でカルテ運用されている事を示す。目の前の患者は、医師が電子カルテに入力している内容が、紙のように診療所のPC内で行われていると思うだろう。だが実際は、遠く離れた場所でカルテ運用が行われている。
 非クラウド電子カルテでも、PCの不調で動かなくなることもあるし、メーカーの対応が遅くなり診療に遅延を来すこともある。しかしながら、クラウド電子カルテのように自分の手元以外に診療録があり、そこで運用されている事実は、医師自身の管理下にあり手元で運用されている紙カルテとは明らかに違う。
 医師会は、各企業に対して、企業の都合で医師の診療スタイルが変更されてしまう恐れが大きくなった「クラウド電子カルテ」に対してなにか要望を出すべきではないか。果たして、これは言い過ぎなのだろうか。私企業に診療録の運用を委ねている現状を患者にどう説明すればいいのだろうか。(真)