TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

在阪5大学医師会役員・2行政医師会役員との懇談会

府医ニュース

2020年1月15日 第2916号

勤務医部会活動報告
働き方改革の萌芽的研究
府医勤務医部会副部会長 幸原 晴彦

 今回の懇談会では平成31年4月からの働き方改革が、5大学と2行政各施設においてどのような取り組みになっているかの状況を発表していただいた。
 それぞれ各項目の取り組みに関してはバランス良く実行されていた。当初はかなり進行していることを予想していたが、働き方改革への意識改革は着実に進行しているようであるものの、現実はゆっくりとした動きである。タイムカードや研修の自己申告にしても、また5日の有給休暇取得にしても、会社などでは日常行われていることであるから、その気になれば1カ月以内に完成できそうなものである。これがすぐにできないことには理由がありそうである。
 会の雰囲気からは、働き方改革に対しての反対意見は全く出なかった。それぞれの施設で早い遅いはあるが取り組みは進行している。特に導入に積極的な施設は見られなかったが、ゆっくりではありながらも改革は受け入れられている様子であった。反対意見が全く見られなかったという事実は、非常に重要な知見である。
 医療はすぐに改革できる部分と、すぐには改革できない部分をもっている。タイムカードに打刻したところで改革に直結するのか、5日間だけの休暇取得に意味があるのか、自己申告は数字合わせに過ぎないのではないかという疑問はあるだろう。このような現場の疑問は客観的にみれば医療の硬直性と捉えられる。しかし前記の項目を1カ月の間に完成したと仮定しよう。そうすると以前の研修制度改革のように、どこかで欠員が生じたり、埋め合わせのための医員の引き上げが発生するかもしれない。それがドミノ的に派生する可能性もある。また勤務時間の短縮で患者の診療拒否や、収入減による病院経営破綻による地域医療の混乱につながるかもしれない。医療は会社とは異なり、患者診療を急激に縮小できない。赤字解消や組織改編のためのレイオフができれば簡単に解決できることも、現体制維持が足かせとなり、短期間での改革が行いにくい構造になっている。これらのことが鈍い動きや消極性につながっている可能性がある。自動車を発進させるとき、アクセルを踏み込んでもなかなかスピードが出ないように、働き方改革を医療界に適応させるのは多くの困難があることは十分分かっていた。しかし今回の発表を見る限り、方向性を持ってゆっくりと動き出しているような気がする。
 特に強調したいことは、研究機関である大学が動いている事実である。ジリジリとした一方向の圧力は、新しい発想への一歩である。既に大阪大学では非接触性の勤怠管理システムの検討がされているが、AIホスピタルの勤務動態管理知能につながるかもしれない。そうした新しいシステム開発が拙速な政策によって潰されないように、医師会は全体の成り行きを見守っていく必要がある。