TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

令和2年 大阪府医師会新春互礼会

府医ニュース

2020年1月15日 第2916号

社会保障充実により国民の不安を払拭

 大阪府医師会は1月5日午後、大阪市内のホテルで新春互礼会を挙行し、郡市区等医師会長や会員のほか、府内選出の国会議員・行政関係者・医療関係団体幹部など約450人が参席。また、横倉義武・日本医師会長をはじめとする来賓から祝辞が述べられた。
 当日は栗山隆信理事の司会で開会し、茂松茂人会長が新年にあたりあいさつ。まず、本年開催されるオリンピック・パラリンピックに言及し、酷暑の中での実施を憂慮しつつ「医療関係者として、選手・関係者・観客に事故なく行われることを祈念する」と述べた。
 また、昨年実施された参議院議員選挙を振り返りながら、医師会としての集票力低下を危惧。政治の重要性を各会員に周知していきたいとした。更に、大型台風や大雨により甚大な被害が発生したことに触れ、大規模自然災害への備えが大切だと指摘した。

国民から信頼を得られる団体に

 すべての団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年、更には65歳以上の高齢者人口がピークを迎え現役世代の人口減が加速する2040年の問題に触れる中で、昨年設置された全世代型社会保障検討会議で、中間報告が取りまとめられたことに言及。後期高齢者の窓口負担割合について、一定所得以上の方については2割とするとの方針が明記されたことなどを指摘した。更に、企業の内部留保が増大する一方で賃金が上がらない現状に国民は強い不安感を抱いていると強調。「国民の不安を払拭するのは社会保障の充実しかない」と訴えた。
 また、厚生労働省が地域医療構想の実現に向けて、病床数の削減や機能分化を含めた再編統合についての再検証を求めた公立・公的医療機関等424病院のリストを公表したことから大きな混乱が起こったことを問題視。トップダウンで決めるのではなく、地域で必要なものは地域で議論し、国民の目線に合った対応をしていくべきとした。
 加えて、医師会は国民から信頼を得られる団体として活動していかねばならないとした上で、多職種がまとまり、ひとつのベクトルに向けて動く必要があると強調。その先頭に立つのは日医であり、府医として日医を支えていきたいと決意を表明した。
 最後に、大阪においては今後、大阪都構想やIR誘致をはじめとする様々な問題が出てくると見通し、府民が幸せに暮らせるか否かを念頭に置き、大阪府知事・大阪市長に意見を述べていきたいとした。

来賓祝辞

 横倉・日医会長に続いて、吉村洋文・大阪府知事(山野謙・副知事代読)が、2025年の大阪・関西万博に触れ、「いのち輝く未来社会のデザイン」がメインテーマであるとし、健康寿命延伸に向けた取り組みへの協力を呼びかけた。次に、松井一郎・大阪市長(鍵田剛・副市長代読)が、「子どもの教育・医療 無償都市大阪」を目指しているとし、力添えを求めた。また、藤垣哲彦・大阪府薬剤師会長は、人生100年時代を迎え、安心して医療を受けられる環境作りが重要と訴えた。そのほか、大塚高司・自由民主党大阪府支部連合会代表、佐藤茂樹・公明党大阪府本部代表、松井一郎・日本維新の会代表(馬場伸幸・幹事長代読)、辻元清美・立憲民主党大阪府連合代表、平野博文・国民民主党大阪府総支部連合会代表からも祝辞が述べられた。
 その後、太田謙司・大阪府歯科医師会長(深田拓司専務理事代理)の乾杯で歓談に移行。各所で賀詞が交わされる中、三田勝久・大阪府議会議長(西惠司副議長代読)、広田和美・大阪市会議長、野田義和・東大阪市長が来賓あいさつ。また、参席している各政党の国会議員、大阪府・市議会議員が壇上から祝詞を披露した。
 閉会あいさつで中尾正俊副会長が、医療の機能分化や医師の働き方改革に基づく様々な変革が起こるとした上で、今後の変革に対応できる府医執行部を作り上げていきたいとし支援と協力を求めた。

かかりつけ医機能を根付かせる
横倉日医会長

 来賓祝辞を述べた横倉・日医会長は、全世代型社会保障検討会議に言及。経済界や政府内の関係審議会の有識者を中心に議論が進められ、医療を提供する現場の声を聞く体制がなかったことから、日医・日本歯科医師会・日本薬剤師会で取りまとめた合同提言「全世代型社会保障改革への期待――日本で暮らして良かった、日本で暮らして幸福だったという『全世代型社会保障制度』へ」について説明したと報告した。更に、後期高齢者の窓口負担割合の2割への引き上げや、受診時定額負担の導入などが検討されていることについて、受診抑制が起こることを危惧。今後、6月の「骨太の方針2020」の取りまとめに向けて紆余曲折が予想されるとし、日医の考えを強く主張していくとした。
 また、次期診療報酬改定率が0.47%プラス0.08%の0.55%となったことについて、満足できる状況ではないとしながら、財政制度等審議会がマイナス改定を打ち出していた厳しい状況の中、一定の評価はしたいと述べた。
 今後の医療提供体制については、かかりつけ医機能を地域で根付かせることが重要と断言。その上で、国が大きな方向性を示して、その方向性に沿って地域の実情に合った医療提供体制を作り出し、国民に必要な医療を提供していくことが重要と訴えかけた。