TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

新春のごあいさつ

大阪府医師会 副会長  高井 康之

府医ニュース

2020年1月1日 第2915号

医療費抑制策としての患者自己負担増に反対

 明けましておめでとうございます。令和最初の新年ですが、会員およびご家族の皆様におかれましては、良き新年をお迎えのことと存じお慶び申し上げます。
 会員の先生方には、日々、世界に誇る国民皆保険制度の下で、国民医療を実践され、府民の健康増進に尽力されていることに感謝申し上げます。しかしながら、我が国の公的医療保険制度は万全とは言い難い状況が生じつつあります。少子高齢化の進展により、人口減少に向かいつつあることは、我が国の将来にとって大きな問題であります。とりわけ、支え手である現役世代の減少により社会保障財源が厳しくなることが予想されることから、政府はこれまでの社会保障システムの改善にとどまることなく、システム全体の改革を進めていくことが不可欠であるとし、全世代型社会保障検討会議を立ち上げて検討に入りました。ライフスタイルが多様化する中で、人生100年時代の到来を見据えながら、お年寄りだけでなく、子ども、子育て世代、更には現役世代まで広く安心を支えていくことが大事であるとして、年金、医療、労働、介護など社会保障全般にわたる持続可能な改革を図る必要があるとしています。一方で、構成メンバーは経済界や経済学者などが中心で、医療や介護の担い手や受ける立場の代表が含まれておらず、給付の抑制や自己負担の強化の方向に向かうことが懸念されます。具体的には、現在は原則1割である75歳以上の後期高齢者の窓口負担の一律2割への引き上げや、外来受診時の定額負担上乗せ導入、市販品類似薬の保険適用外し――などが俎上に上がっています。公的医療保険制度は、傷病のリスクをみんなで支え合うのが本来の目的であり、患者の自己負担の強化はその趣旨に反するものであります。このようなことが導入されると、受診抑制を招いて重症化してからの受診が増加し、かえって医療費を増加させたり、国民の健康被害にもつながりかねません。政府には賢明な選択をしていただきたいものです。そのために、日本医師会と協力して働きかけていきたいと存じますので、会員の先生方のご理解とご協力のほどお願い申し上げます。
 令和の時代が、会員、国民にとって幸せな時代となることをお祈り申し上げます。