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医師・医療関係者のみなさまへ

第3回周産期医療研修会

府医ニュース

2019年12月25日 第2914号

途上国の医療教育支援を考える

 大阪府医師会・大阪産婦人科医会は11月9日午後、令和元年度第3回周産期医療研修会(大阪府委託事業)を府医会館で開催。「新生児蘇生法と周産期医療支援を海外活動から学ぶ」をテーマに、医療関係者約60人が受講した。
 冒頭、笠原幹司・府医理事は、大阪府における周産期緊急医療体制への協力に謝意を表した。次に、日本の周産期・新生児死亡率の低さに言及。日本の誇れる医療を海外に広め、人材育成を行うことが将来的な使命とし、本研修会がその一助になればと期待を寄せた。
 荒堀仁美氏(大阪大学大学院医学系研究科小児科学助教)および丸尾伸之氏(淀川キリスト教病院産婦人科部長)が座長を務め、嶋岡鋼氏(国際医療福祉大学塩谷病院小児科副部長)が「途上国と新生児蘇生法――私が学んだこと」と題して講演。嶋岡氏は、世界の子どもの推計死亡数が著しく減少していることに触れ、「世界は確実に良くなっている」と述べた。一方、生後1週間以内の新生児は死亡リスクが高いとして、途上国における新生児蘇生法の普及が死亡率減少につながると指摘。新生児蘇生法教育を普及させるためには、現地の実情を踏まえ、新生児蘇生法講習を医療背景に合致した形へ組み直して実践することが重要とした。
 続いて、清川晶氏(倉敷中央病院産婦人科医長)が「カンボジア医療支援におけるシミュレーション医療教育」と題して講演。清川氏はまず、ポル・ポト政権下の歴史を振り返り、「十分な医学教育を実施できる人材が不足している」と説明した。また、カンボジアにおける妊産婦の死亡率は現在も日本の50倍以上と報告し、母体救命の医療技術を現地医師に指導できる人材育成の必要性を提示。清川氏は現在、医療技術と指導能力の両方を身に付けるためのプログラムを3年計画で実施しており、その活動について詳説した。