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府医ニュース

2019年12月25日 第2914号

◆「それを作れば、彼が来る」幻の声に導かれ、トウモロコシ畑に野球場を作る。その謎を追い続け、最後に時を超え、生前確執のあった父親と再会し父子愛をとり戻す。映画「フィールド・オブ・ドリームス」である。
◆映画では、現実の中のトウモロコシ畑が天国のような夢の野球場になるが、この原作者のカナダの小説家W・P・キンセラは、重い糖尿病から安楽死を選び、現実の中に天国を見出せなかった。
◆カナダでは医師による自殺幇助が合法化されている。医師が致死量の薬剤を処方し、患者自身が服用するもので、がんや神経変性疾患など安楽死を希望する患者は少なくないという。しかし、世界医師会は医師による自殺幇助は医療倫理の観点から適切でないとし、事実上その確執からカナダ医師会は脱退した。
◆医療とは元来、病を治す、悪化を防ぐことである。そして今は、終末期の心身の苦痛を和らげる緩和ケアまでの役割を成す。たとえ合法であっても、天国への選択に応じる安楽死の幇助までは、やはり人道的に荷が重い。(誠)