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医師・医療関係者のみなさまへ

HIV医療講習会

府医ニュース

2019年12月18日 第2913号

地域全体での診療体制を構築

 大阪府医師会が主催する令和元年度「HIV医療講習会」が10月31日午後、府医会館で開かれた。病診連携および感染対策に関する2題の講演が行われ、約100人が聴講した。
 白阪琢磨氏(大阪医療センター臨床研究センター長・HIV/AIDS先端医療開発センター長)が座長を務め、まず、中尾正俊副会長があいさつ。HIV感染者の減少とともに関心が薄れていることが危惧されるとし、特に若年者の感染予防対策が重要と述べた。また、治療の長期化により、生活習慣病を併発するケースも増加しており、「地域の医療機関で診察することが求められている」と指摘。本講習会が、地域での連携や医療機関の安全確保につながればと期待を寄せた。
 次いで、渡邊大氏(同センター臨床研究センターエイズ先端医療研究部HIV感染制御研究室長)が、「HIV感染症の課題と期待される病診連携」と題して講演。抗HIV療法の進歩により、直接的にAIDSで死亡する患者は5%程度にまで減少したとする一方、治療期間が長期にわたることで、生活習慣病や骨折で他科受診が必要になるなど、「新たな課題が生じている」と述べた。こうした事例では、同センターで対応するよりも、地域の医療機関を受診することが望ましいと言及。今後、AIDS患者の高齢化が一層進展することからも、「地域全体で診療する体制づくりが必要」との見解を示した。
 引き続き、上平朝子氏(同センター感染内科長・感染制御部長)より、「HIVの感染対策」として講演が行われた。現状では、HIVウイルスの職業的暴露は認められていないが、「何も対策をしなくて良いということではない」と強調。①手指衛生や手袋着用など標準予防策の徹底②針刺し暴露後の予防内服③患者のウイルス量のコントロール――が前提であるとした。その上で、感染防止対策により安全にHIV患者を診察できるとし、医療連携が進むよう協力を促した。