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時事

全世代型社会保障検討会議(第2回)開催

府医ニュース

2019年12月18日 第2913号

横倉会長がヒアリングに出席

 政府は11月8日に第2回全世代型社会保障検討会議を開催し、有識者からのヒアリングを行った。医療界からは横倉義武・日本医師会長、堀憲郎・日本歯科医師会長、山本信夫・日本薬剤師会長の3氏が出席し、三上洋一郎、石山アンジュ、武田洋子の3氏も出席した。医療界を代表して意見を述べた横倉会長はまず、三師会で取りまとめた合同提言「全世代型社会保障改革への期待」を提出した。すなわち、「人生100年時代の患者・国民の安心につながる丁寧な議論(医療全体のあるべき姿、ビジョンを国民に示していくことが安心につながる)」「疾病予防、健康づくりの推進――健康寿命の延伸とそれによる支え手の増加(人生100年時代の安心の基盤は健康であり、生涯を通じ健やかに過ごすためには予防が重要)」「国民皆保険の理念の堅持(国民皆保険の理念に沿った改革こそが国民の安心につながる)」の3つの事項について述べた。
 更に、全世代型社会保障改革に向けての日医の考えを、(1)予防の推進(2)地域に根ざした医療提供体制の確立(3)全世代型社会保障に向けて――を中心に説明。
 (1)「予防の推進」では、社会保障改革の主眼が「国による医療・介護に対する支出の抑制」によって、結果として質の低下を及ぼすようでは、国民の理解は得られないと強調。また、急激な制度変更による医療・介護に対する支出の抑制政策をとれば国民の反発を招きかねないとした。更に、国民の「住み慣れた地域で、自分らしく生涯を全うしたい」との願いをすべての関係者が共有し、成熟社会である「令和」の時代は、社会の格差が拡大しないよう、社会保障を充実させ、経済成長を促すような取り組みを推進して、健康寿命を延伸することにより、結果として支え手も増加すると言及。妊娠・出産から高齢者まで切れ目のない全世代型社会保障を目差すとした。
 (2)「地域に根ざした医療提供体制の確立」に関しては、かかりつけ医を中心とした「切れ目のない医療・介護」の提供の必要性を提言した。その中で述べられている多職種連携は重要であるが、在宅医療を行わないかかりつけ医は患者の診療を中断してしまうこととなり、「切れ目のない医療」に反するのではないだろうか。また、「地域密着型の中小病院・有床診療所」に期待されるものとして、かかりつけ医機能と入院機能を持ち、地域包括ケアシステムの一翼を担うことは必要であるが、無床診療所の役割、存在意義、将来に危惧を持つ必要はないであろうか。最期まで診ない「かかりつけ医」は国民の期待・支持を受け難いと考える。
 (3)「全世代型社会保障に向けて」については社会保障が持つ経済効果に言及し、▽「医療は消費」と位置付ける意見があるが、社会保障と経済は相互作用の関係にある▽経済成長が社会保障の財政基盤を支え、他方で社会保障の発展が生産誘発効果や雇用誘発効果などを通じて日本経済を底支えする▽医療の拡充による国民の健康水準の向上が経済成長と社会の安定に寄与する▽国民が安心して老後を迎えられるようにするために、社会保障を充実させる必要がある▽老後が不安であるという思いを持つ多くの国民に安心を示すことは、経済成長を取り戻すための出発点である――とした。
 また、受診時定額負担は改正健康保険法附則で明記され、その後の国会での附帯決議でも確認されてきた、「負担率100分の70」を超えて患者から徴収するものであり、容認できないとの提出資料は説得力があると考える。
(中)