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医師・医療関係者のみなさまへ

十四大都市医師会連絡協議会

府医ニュース

2019年12月18日 第2913号

子育て・高齢者支援の推進など求める

 政令指定都市医師会などで構成される十四大都市医師会連絡協議会が11月9日・10日、北九州市医師会の主務で開催された。3つの分科会や横倉義武・日本医師会長による特別講演などが行われ、都市部における医師会の在り方について討議した。

開会式では下河邉智久・北九州市医師会長があいさつを行い、9月の台風15号および10月の19号に言及。被害に遭われた方々にお見舞いの言葉を述べるとともに、被災対策は医師会の重要な役割であると断言。力を注いでいきたいとした。また、医療・介護・保健を取り巻く環境は非常に厳しいとした上で、大都市が抱える医療課題について積極的に協議してほしいと要請した。

第1分科会
医療的ケア児への支援について

 まず、医療的ケア児への支援に関するアンケート結果が報告された後、酒見好弘氏(国立病院機構小倉医療センター新生児センター長)が「基幹病院・医療的ケア児を地域へ送り出す立場から」と題して講演。自身の病院の実績・課題や小児在宅医療の問題点などを挙げた。
 続いて、「医療的ケア児への支援」について、各医師会が取り組みを紹介。小児在宅医療に関わる診療所については、小児在宅医療を行う医師や小児科専門医の数が全国的に少ないのが現状である。また、大阪府医師会から前川たかし理事が、診療所と病院(後方支援病院を含む)との関係として、大阪市重症心身障がい児者の医療コーディネート事業を紹介。更に、大阪小児科医会の在宅小児かかりつけ医紹介事業、府医が実施している小児在宅医療研修会や同行訪問研修の開催状況などを述べた。
 そのほか、訪問看護ステーション、レスパイト施設としての児童発達支援事業所・放課後等デイサービス事業所や医療機関併設型病児保育室との連携、小児在宅医療推進に向けた地域での取り組みについて意見交換した。

第2分科会
健康長寿社会を目指して――二次予防医療への取り組みを中心に

 はじめに北九州市保健福祉局長より、「健康(幸)寿命プラス2歳に向けた北九州市の取り組み」と題する講演が行われ、健康寿命延伸に向けた同市の取り組みを紹介。コミュニティへの支援や健康アプリの開発などが報告された。
 続いて、「特定健診・各種がん検診」について意見を交換。府医からは宮川松剛理事が特定健診のモデル事業として、昨年、茨木市で実施した「かかりつけ医からのクリスマス健診」を発表した。本事業は、医師会・市(保険者)が協力し、かかりつけ医療機関の院長名で受診勧奨はがきを送付するというもの。協力医療機関を募り、約1千人の対象者に案内したところ、特定健診受診率は72%になったことが示された。
 そのほか、「健康寿命の延伸(健康づくり)に関する事業について」をテーマに協議。各都市からは健康体操教室や食育事業の展開、市民への健康啓発に工夫を凝らすなど、様々な手法でアプローチされていることが報告された。いずれの医師会も「行政との協働」が不可欠とのスタンスであり、協力関係を構築することの重要性が確認された。

第3分科会
行政との連携・協働――子育て支援、高齢者支援を通して

 まず、北九州市と同市医師会が連携・協働した「北九州とびうめネット連携事業」を紹介。切れ目のない医療・介護サービスが適切に提供される仕組みで、レセプト情報を医療の現場で広く本格的に活用する全国初の事例であるとされた。
 続いて「子育て支援」について各医師会での取り組みを紹介。東京都医師会はこれからの取り組みとして、フィンランドで実施されているネウボラ(妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援をワンストップで行う制度)に言及。平成30年4月1日現在、全国761市町村1436カ所で実施されているが、医師の介入が進んでいない状況であり、行政と連携して取り組んでいきたいとした。
 「高齢者支援」に関しては、府医から中尾正俊副会長が、大阪市における自立支援型ケアマネジメントの推進に関し、検討会議の概要や現在の状況などを説明。かかりつけ医からの情報提供が適切に行われているとした。更に、大阪府在宅医療介護ICT連携事業についても説明。地域包括ケアの実現に役立てている一方、ランニングコストが1年分しか補助されないことによる事業継続への不安やセキュリティへの不安があるとした。

全体会議(2日目)
日本医師会の医療政策 横倉日医会長が講演

 翌日10日の全体会議では「医師会との強い協働により、行政は子育て・高齢者支援を推進せよ」など8項目の決議を採択。また、各分科会の座長より議論の総括が行われた。
 続いて、横倉・日医会長による特別講演「日本医師会の医療政策」が行われた。まず、医師会の役割について述べた後、明るい長寿社会に向けて、日本健康会議などの取り組みが行われていることを紹介。また、超高齢社会・人口減少社会に向けた医療の在り方について、かかりつけ医の重要性を指摘し、国民に定着するよう働き掛けていくとした。更に、11月8日に開催された全世代型社会保障検討会議において、日医・日本歯科医師会・日本薬剤師会で取りまとめた合同提言「全世代型社会保障改革への期待――日本で暮らして良かった、日本で暮らして幸福だったという『全世代型社会保障制度』へ」について説明したことを報告。「人生100年時代の患者・国民の安心につながる丁寧な議論」「疾病予防、健康づくりの推進」「国民皆保険の理念の堅持」の3項目を掲げたとした上で、社会保障の充実により国民不安を解消していくべきであると締めくくった。
 次に、猿渡辰彦・TOTO㈱前副社長が「拘りのものつくりが明日を切り拓く。世界が求める絶対品質へのチャレンジ!」をテーマに講演。水栓金具を作る部門の技術部に配属以来40年間ものづくりに従事した経験を踏まえながら、絶対品質にチャレンジし続けたこれまでの歩みを熱く語った。

茂松府医会長が次期主務地として決意語る

 閉会式において、次期主務地を担う府医の茂松茂人会長があいさつ。実りある協議会となるよう力を尽くすと決意を表明した。