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医師・医療関係者のみなさまへ

在宅療養における看取り等研修会(三島ブロック)

府医ニュース

2019年12月4日 第2912号

多死高齢社会を乗り越えるために

 在宅療養における看取り等研修会(三島ブロック)が10月24日午後、大阪市内のホテルで行われた。本研修会は「大阪府在宅医療総合支援事業」として府内各地で実施しており、今回は茨木市医師会の協力を得て開催。医師会役員、在宅医療・介護連携担当医師、警察医・監察医ら約180人が聴講した。
 当日は、上野豊・茨木市医師会長が開会あいさつを行い、近藤浩之・同市医師会理事が座長を務めた。
 まず、砂川奈芳子氏(大阪府健康医療部保健医療室保健医療企画課)が「大阪府における死因調査体制の整備にむけて」と題して講演。適切な死因を特定する死因調査体制の確立に向け、制度の更なる充実への協力を要請した。
 次いで、松本博志氏(大阪大学大学院医学系研究科・医学部法医学研究教授)が「在宅医療における死因診断について――死後診察とは」と題して講演。死因究明等推進基本法(令和2年4月1日施行)は、死因究明等に係る人材育成、研究等の拠点、専門的な機関の全国的な整備などが基本的施策とされたと言及。在宅医療が増える中、独居高齢者が多い大阪においては異状死が増えることが見込まれ、未曾有の多死社会に世界が注目しているとした。また、遠隔地からの死亡診断が可能になったガイドライン(厚生労働省「情報通信機器〈ICT〉を利用した死亡診断等ガイドライン」平成29年9月)を紹介し、在宅死亡における死因診断の重要性を強調。在宅医療の終末期において所見取りの手法を詳説した。
 続いて登壇した河野朗久氏(河野外科医院/大阪府監察医・大阪府警察医)は、「在宅医療での看取りと死亡診断について」と題して講演。人生の最終段階を自宅で過ごしたいという人が増えてきているとした上で、自宅で亡くなった場合にはほとんどの事例で異状死の届けがなされると説明。それにより、警察医と監察医の負担が増大し、遺族の精神的・経済的・時間的負担が大きくなっていることを問題とした。在宅医療や施設で医師が継続して診療を行っている場合は、医師自ら検案をすれば、その場で死亡診断書を発行してよいと加えた。また、自らの在宅医療の体験を交え、患者との日常の会話の中に、穏やかな看取りと遺された家族のケアにつながるポイントがあるとまとめた。