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医師・医療関係者のみなさまへ

IPPNW大阪府支部講演会

府医ニュース

2019年12月4日 第2912号

日本語「レンズ」で見たヒロシマ

 核戦争防止国際医師会議(IPPNW/International Physicians for the Prevention of Nuclear War)大阪府支部(安田正幸支部長)は10月24日午後、詩人・エッセイスト・絵本作家の肩書きを持つアーサー・ビナード氏を講師に迎え、恒例の講演会を開催した。

 安田支部長が座長を務め、ビナード氏が「知らなかった、ぼくらのヒロシマ」と題して講演した。まず、ビナード氏は当初から日本という「国」に関心があったわけではなく、大学時代に他国の言語で詩を表現する手段として、日本語に興味を抱いたと述懐。大学卒業後は単身日本へと渡り、語学を学び、「言葉というレンズを通すことで、モノの捉え方が変わることを知った」と振り返った。また、広島県を訪れた際に聞いた被爆者の体験談では、原子爆弾を「ピカ、ピカドン」と表していたとし、〝atomicbomb”では伝わらない臨場感が得られ、「ヒロシマを身近に感じるようになった」と語った。
 以後、第二次世界大戦を調べるうちに、▽広島と長崎に投下された爆弾は別物であること▽atomicbombというフレーズは米国民に向けたキャッチフレーズ▽原爆投下により戦争を終結させ、日米双方の犠牲者を減らすことができたという歴史観の強要――などに気が付いたと強調。特に長崎の爆弾は広島とは異なってプルトニウムを使用しており、「米政府が世界の覇権を得るために開発した新型兵器であった」と主張。戦争終結のためではなく、「威力の人体実験」と断じた。
 その後もプルトニウムは「平和利用」と名を変え、原子力発電に利用され、「日本中が現在も被曝し続けている」と警告。こうした状況を当たり前のように受け入れる背景には、「他人事」としか感じていない「鈍さ」があると訴え、自分のこととして現実を直視し、感覚を磨くことが大切と結んだ。