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医師・医療関係者のみなさまへ

第43回府医 医学会総会

府医ニュース

2019年12月4日 第2912号

日常診療の留意点など会員が発表

 令和元年度(第43回)大阪府医師会医学会総会および第51回医療近代化シンポジウムが11月4日、府医会館で開かれた。総会では府医会員による一般演題(パネル展示)発表、医学会評議員会、特別講演を実施。近代化シンポは、「がん診療の進歩」をテーマに3題の講演が行われた。

 午前に行われた一般演題では、パネルを使用し、日常診療の中で得た気付きや留意点の報告、医師会・医会等の取り組み、学校保健活動――など計49題が発表された。茂松茂人・府医医学会長(府医会長)も会場を訪れ、時にはポイントを尋ねるなど、熱のこもった議論が展開された。
 午後からは、星賀正明・医学会運営委員(府医理事)の司会で、医学会評議員会を開催。冒頭、あいさつに立った茂松・医学会長は、医療界に山積する課題に触れ、「ワンチームで立ち向かわなくてはならない」と主張。また、医師は生涯にわたって研鑽を積む必要があり、「研修の場を提供し続けることが重要」として、生涯教育制度を一層充実させたいとの意向を示した。
 次いで、荻原俊男・医学会副会長が令和元年度の学術研修活動として、医学会企画の学術講演会、病院実習、現地セミナーなどを報告。また、医学会雑誌『大阪医学』府医会長賞については、「守口市5歳児健康診査巡回支援事業の取り組み」(森口久子氏/守口市医師会・府医学校医部会ほか)、「当クリニックで経験した百日咳症例の検討」(河本浩二氏/かわもとこどもクリニック〈高槻市〉)――の2論文が表彰され、茂松・医学会長より表彰状が手交された。続いて、福田正博・府医生涯教育推進委員会委員長が、生涯教育関係事項として、「府医生涯研修システム」「日医生涯教育制度」の状況を詳説した。
 引き続き、高井康之・府医副会長が座長を務め、東田有智氏(近畿大学病院長/同大学医学部呼吸器アレルギー内科主任教授)が、「喘息治療――過去・現在・未来」と題して特別講演を行った。喘息は昭和35年頃までは気管支が収縮するだけの「機能的疾患」と考えられており、気管支拡張薬が主流で「死に至る病」との認識が一般的であったと言及。その後、「器質的疾患」と解明され、吸入ステロイド薬治療へと移行し、喘息による死亡は減少したと述べた。一方で、生活に支障を来す患者が存在しており、その原因のひとつに鑑別診断の難しさがあると指摘。適切な診断が容易にできるよう研究に取り組み、「通常診療でもある程度の診断が可能になった」とした。また、治療に関して今後の方向性を提示。近い将来に適用が広がっていくと見通した。

第51回医療近代化シンポジウム「がん医療」に焦点

 第51回となる医療近代化シンポジウムは、「がん診療の進歩」を主題に実施。荻原・福田両氏が座長を務め、はじめに、松浦成昭氏(大阪国際がんセンター総長)が、「がん医療の最前線とこれから」と題して講演した。まず、がん医療では、①手術②放射線治療③薬物治療――が3本柱とし、それぞれを解説。患者のニーズにあわせて「医療機関が連携することが大切」と述べた。
 続いて、茶谷正史氏(大阪重粒子線センター副センター長)が「重粒子線治療の進歩」として、その特徴を解説。健康保険への適用も拡大傾向にあり、更なる広がりに期待を寄せた。
 最後に駄賀晴子氏(大阪市立総合医療センター腫瘍内科部長)が、「進化するがん薬物療法」をテーマに分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤を詳説。ゲノム医療にも触れ、今後更にがんの治療成績が向上するとの見方を示した。