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国境のない地図2

府医ニュース

2019年11月27日 第2911号

 11月9日はベルリンの壁崩壊30周年でした。
 私は、府医ニュース第2821号(平成29年5月31日)の当欄に「国境のない地図」と題して、ベルリンの壁崩壊をクライマックスとして、「国境のない地図」を希求するという内容の同名の宝塚歌劇作品(作・演出:植田伸爾、演出:谷正純/平成7年)を取り上げました。
 現在、ヨーロッパのシェンゲン協定加盟国間では出入国検査なしで行き来が可能となっています。
 昨夏ウィーンに旅行した際、陸路で国境を越える体験をしてみたいという単純な好奇心から、日帰りで隣国スロバキアの首都ブラチスラバに行きました。
 ウィーン中央駅から電車に乗り、オーストリア人と結婚してウィーンに30数年住んでいるという日本人女性のガイドさんと話しているうちに、約1時間でブラチスラバの駅に着きました。いつの間に国境を越えたのか? 冷戦時代のような有刺鉄線はなくとも、車窓からでもはっきり分かるような目印があると思っていたので、拍子抜けした思いでした。パスポートチェックはもちろん、検札にさえ来ませんでした。かつて越えようとして多くの人が命を落とした東西の国境は、知らないうちに通り過ぎるものとなっていました。
 ガイドさんによれば、スロバキアからオーストリアに多くの人が働きに来ていて、週末には電車で家に帰る姿を見かけるとのことでした。
 「国境のない地図」というよりも「地図の上にしか国境がない」の方が近い状況と思われました。通りすがりの旅行者に過ぎない私が、その功罪について軽々に論じることはできません。ただ、ヨーロッパの人々にとってはこれが日常なのだと思いました。
(瞳)