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公教育の市場化

府医ニュース

2019年11月20日 第2910号

 大学入試への英語民間試験の導入が延期となった。まず前提として、センター試験が2021(令和3)年に廃止される事実を知っておかなくてはならない。この廃止の際の文部科学大臣は「これから日本の大学というのは、どんどん地盤沈下する可能性がある。(中略)日本の大学は国際化に対応できていない」とインタビューで語った。名称は大学入学共通テストと変わる。主な特徴は、国語・数学で記述問題が導入されること、英語で民間試験が導入されることだそうだ。
 今回、この拙速な英語試験の民間外注が問題となった。元々は、文科省の英語教育の在り方に関する有識者会議で、ITグループ企業会長が英語民間試験の導入を強く訴えたことが発端である。企業としては、英語を話せるビジネスマンがほしいということだろう。
 また、以前より本稿で繰り返し訴えている、英語圏の商習慣がすんなり本邦に入るよう、教育から改革しているという側面もある。そう、TPPやTiSAのようなグローバル企業のための貿易協定の存在だ。政府が呼ぶ有識者達を見てもこの見方は間違ってはないだろう。
 公的な試験に民間事業者が入るということは、当然、利益相反や試験の公平性が担保されるのかという問題もある。一番伝えたいことは、この政策の文脈が新自由主義的だということである。グローバル対応の人材育成が国策であっても民間に任せる必要はない。つまり、社会的共通資本としての教育が市場化されていることを国民は自覚せねばならない。
 同じく社会的共通資本である医療もこの流れにある。医師の働き方改革、そして、産業衛生分野のストレスチェックなどに営利的組織が利益を得るために侵入することに注意を向けてみることも大事だ。我々は例え為政者にドリルを向けられようとも、聖域、つまり公共のための岩盤は保持すべきではないだろうか。(真)