TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

時事

地域・職域連携推進ガイドラインが改訂

府医ニュース

2019年10月30日 第2908号

協議会の〝成長〟に向けて

 9月26日、厚生労働省「これからの地域・職域連携推進の在り方に関する検討会」報告書が公表され、併せて「地域・職域連携推進ガイドライン」が改訂された。このガイドライン(GL)は、地域保健と職域保健が連携し、継続的かつ包括的な保健事業を展開するために2005年に策定され、06年、07年と改訂されてきた。時代によって変化する価値観や社会情勢、テクノ
ロジーの発展を踏まえた更なる改訂のため、今年3月に検討会が立ち上げられた。
 報告書では、現状の課題として、人的・予算的・技術的課題によりデータを適切に分析できていないことを指摘。今後、国が保有するデータの提供も求められるとした。目指すべき方向性では、根拠に基づいた評価指標や評価方法の確立、退職や転職に伴う保険者間での健診データ等の引継ぎ体制の整備が望まれるなどとしている。
 改訂GLでは、地域・職域連携推進協議会(以下、協議会)の開催に留まることなく、具体的な取り組みの実施にまでつなげていくため、以下の事項を整理している。
 (1)基本的理念の再整理:▽在住者や在勤者の違いによらず、地域関係者への幅広い取り組みの促進(地域・職域連携によるポピュレーションアプローチの強化)▽多様な関係者がメリットを感じられる取り組みの推進(健康経営を通じた生産性の向上等)▽支援が不十分な層(退職者、被扶養者、小規模事業場)への対応促進。
 (2)地域・職域連携推進協議会の効果的運営:▽事務局機能の強化▽各関係者の役割期待の明確化による積極的参画の促進▽他の健康関係の協議会との連携の在り方の明確化による、更なる効果的な連携の促進。
 (3)具体的な取り組み実施のために必要な工夫:▽実行を重視した柔軟なPDCAサイクルに基づいた事業展開の促進▽共通理解と現場レベルでの連携促進▽地域特性に合わせた効果的な事業展開に向けたデータ活用の促進▽リソースの相互共有・活用等の促進による効率的・効果的な取り組みの実施。
 協議会は、都道府県および二次医療圏を単位として設置され、関係機関が合意形成する上で中核的役割を果たすと位置付けられているが、状況は様々であり、形式的に年1回の会議実施に留まっている協議会もあるという。成長イメージとして、レベル1(協議会の開催)、同2(具体的な取り組みの実施)、同3(予算や人員を確保しての自立的・継続的な実施)が示されている。
 労働力の高齢化が進む中、疾病を抱えた労働者の治療と仕事の両立への対応や、入職時からの健康づくりが求められている。また、健康増進を重要な経営課題と捉え、企業が成長する上で積極的に従業員の健康に投資する「健康経営」の考え方も広がり、新たな連携が求められているとされる。
 地域・職域連携のニーズ自体は、これまで以上に高まっていると考えられる。協議会のメンバー構成と、現場の問題意識や実情にどれだけ寄り添えられるかが、鍵となろう。
(学)