TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

本日休診

デフレ下での逆進課税

府医ニュース

2019年10月16日 第2907号

 10月1日、予定通り消費増税が実施されました。増税直前に千葉の台風災害がありましたので、今回の増税は現地の方々にとって復興の妨げになることでしょう。また、現時点で増税前の駆け込み需要が前回を超えたという話を聞くことはありません。冷え込んだ庶民の生活はより厳しいものになります。医療機関の経営問題もさることながら、目の前の患者やその家族の生活がどうなっていくのかと心配が絶えません。
 昨年、自民党の安藤裕・衆議院議員は政府への提言として、「現行の煩雑な手続きが必要なものを廃止した上で、①軽減税率を8%から5%へ②軽減対象は100万円以下のもの全部、更に③個人で買うものは全部軽減の対象とする」ことを訴えました。実質上の減税政策です。増税後にすぐ減税を行うのが難しいのであれば、補助金よりもこのような軽減税率と軽減対象の変更の方が効果的だと思います。
 消費増税で国民の生活が破壊されると、今度は消費増税以外の税財源議論がなされるはずです。社会保障制度改革国民会議で伊藤元重教授が提唱した「死亡消費税」や「自動車走行税」など累進性ではない逆進性の高い税が出てくると予想します。どの税が、より貧富の格差や中間層の脱落が進むのか常に考えることが必要です。今話題の膨らんだ「内部留保への課税」も法人減税へのバックアップになる可能性があります。
 そもそも自国通貨を発行できる国がどうして財源の問題に直面するのでしょうか? 税は唯一の国家財源ではありません。また税には財源以外に、インフレ対策、格差是正(社会の安定化)、たばこに課税するなど「逆のインセンティブ」を与える政策誘導の意味合いがあります。デフレの今、逆進性が高く景気を冷え込ませる消費増税の意味が全く理解できないのです。(真)