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シルバー健康大学

府医ニュース

2019年10月16日 第2907号

良好な人間関係で充実したシニアライフを

 令和元年度「シルバー健康大学」が9月17日午後、大阪府医師会館で開催され、府民約170人が参集。本イベントは府医主催で昭和60年から毎年実施し、今回で第49回を数える。今年度は、「シニア世代のコミュニケーション能力」に関する講演および毎年恒例の健康体操を行った。

 開会にあたり阪本栄理事は、高齢化が進む日本の状況に言及。「人生100年時代」と言われ、平均寿命は世界トップレベルとなる中、長くなった老後をできるだけ介護を必要とせず健やかに過ごすためには、「健康寿命」を伸ばすことが大切であると強調した。また、本イベントが参加者にとってそのヒントが得られる機会になればと期待を寄せた。
 続いて、森岡勇記氏(トータルコミュニケーションセンターピーエスラボ代表)が「シルバー世代にも大切なコミュニケーション能力向上セミナー/より良い人間関係を築いて、認知症も予防しましょう」と題して講演。シニア世代の方々は、今まで関係性のあった人と会う機会や、新しい出会いが減少するとともに、聴き取る力や発音・発声能力が低下し、自分と異なる考え方に耳を傾けるしなやかさを失っていく傾向があるとした。このような状況からシニア世代の方々の中には人間関係に悩みを持つ人が少なくないとし、より良い人間関係を築くための「コミュニケーション能力」を向上させるトレーニングを紹介した。
 森岡氏は、トレーニングを始める前に、まずは自分の「話し方」「聴き方」「質問の仕方」を自覚することが必要と指摘。その上で、シニア世代が行ってしまいがちなパターンを知り、自分の「話し方」「聴き方」「質問の仕方」のどこを、どのようにコントロールすればよいかを考えるようにすべきと解説した。
 具体的なポイントとして、「話す」時には、▽決まった時間の中で話す▽一文を短くする▽主語を省かない▽代名詞を使わない▽5W1Hを意識する▽発音・発声と滑舌を明瞭にする――ことを心がけるようアドバイス。また、「聴く」時には、▽相手の話の邪魔をしないように「相づち」を打つ▽大事な単語を「オウム返し」する▽メモを取らずに聴き、その内容を他の人に話す――等のポイントを挙げた。更に、「質問する」時には①「はい」か「いいえ」で答えられる質問②「A」か「B」の選択肢で答えられる質問③「単語」で答えられる質問④「文章」でないと答えられない質問――の4つのパターンを状況に応じて使い分けることで、スムーズに会話を進められるとした。
 最後に、このような簡単なトレーニングを日常生活の中で繰り返し行うことで、コミュニケーション能力は確実に向上するとし、「シニアライフを人生で最も充実した時期にするために、今からトレーニングを始めてほしい」と呼びかけた。
 講演後には、吉中康子氏(京都先端科学大学教育開発センター特任教授)が「健康長寿のビタミン体操――体操は心と体のビタミン剤『体操を常備薬にしよう!』」をテーマに、座ってできる簡単な健康体操を実施。介護いらずの健やかな心身を保つためには運動を継続することが大切とし、体操を日々の生活の「常備薬」にしてほしいと述べた。