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医師・医療関係者のみなさまへ

近医連総会 分科会報告(概要)

府医ニュース

2019年10月2日 第2906号

第1分科会/医療保険
維持期・生活期リハビリ
介護への移行で質の低下を懸念

 第1分科会(医療保険)では、総会に上程する決議案が協議され、全員一致で承認を得た。また、次期診療報酬改定への対応を議題とし、中央情勢報告のほか、「次期診療報酬改定で特に要望すべき事項」ならびに「現在の医療と介護の連携体制等における課題・問題点」について意見交換を行った。
 中央情勢報告を行った城守国斗・日本医師会常任理事はまず、市販薬に類似した医療用医薬品の患者負担引き上げについて、中医協で「検討している事実はない」との言質を得たと明言。そのほか、機能強化加算、10月の消費費税率引き上げに伴う診療報酬改定、来年4月の診療報酬改定などを説明した。
 「次期診療報酬改定で特に要望すべき事項」に関する意見交換では、各府県より、初・再診料などの基本診療料引き上げ、医学管理料の適用拡大、訪問診療の点数設定の是正、認知症患者の診療に対する評価などを要望。それに対し、城守・日医常任理事は、再診料1点引き上げに100億円、初診料1点引き上げに25億円がかかるとし、財源捻出が課題であるとした。
 「現在の医療と介護の連携体制等における課題・問題点」に関する意見交換では、各府県より、地域包括ケアシステムの構築・推進におけるケアマネジャーの役割の重要性、多職種連携の会議やICTを活用した連携の必要性などを指摘。大阪府医師会からは栗山隆信理事が発言し、要介護被保険者等に対する維持期・生活期リハビリテーションは、医療から介護への移行による患者の身体機能低下が全く考慮されていないと指摘。医療現場の実態を理解していない施策であり、必要な医療を適切に受けられることを希望する患者の立場からかけ離れたものになっていると問題視した。各府県からの意見に対し、城守・日医常任理事は、リハビリテーションの介護への移行で質の低下が懸念されている現状に対し、医療から介護への移行後の評価を一定程度測定する必要があると発言。悪化した事例を日医に提示してほしいと呼びかけた。
 最後に、今後、国民負担増加や公的給付範囲の見直しが議論されることになるとし、国民皆保険制度が崩壊することがないよう、現場の声を聞きながら行動していきたいとの意向を示した。

第2分科会/地域医療
外来機能等の偏在
地域特性に応じて対策を

 第2分科会(地域医療)では、地域包括ケアシステムにおける多職種連携の取り組みと課題および医師偏在・外来医療機能の偏在対策が協議された。
 まず、各府県より①多職種連携の取り組みと課題②在宅医療と介護の現場での問題点③多職種連携におけるICT活用での課題等――について意見を交換。それぞれの見解が示される中、大阪府医師会からは、前川たかし理事が発言した。前川理事は、更なる高齢化の進展により、医療・介護サービスを利用しながら地域で生活する高齢者が増加することが見込まれると指摘。退院支援、日常の療養支援、急変時の対応、看取りを重視することが、「住み慣れた地域で暮らし続けるためには欠かせない」との見方を示した。その上で、府医では大阪府と協力して、『入退院支援の手引き』『変化に気づき介護と医療をつなぐ確認シートの手引き』を作成したと説明。これらを研修等で活用し、医療と介護の連携を深め、「高齢者が安心して暮らせる地域づくりにつなげたい」と述べた。更に、多職種連携におけるICTの発展には、各社ソフトが利用できるプラットフォームの開発が必要として、日本医師会主導による取り組みを要請した。
 引き続き、医師・外来医療機能の偏在対策として、▽医師偏在指標▽地域における外来医療機能の不足・偏在等への対応▽医師が少ない地域での勤務のインセンティブとなる認定制度の創設▽医師偏在対策における医療提供体制の在り方――の4つの視点から意見を交わした。府医からは宮川松剛理事が見解を表明。医師偏在指標は、基本的には単に人口10万人当たりの医師数を示したものに過ぎず、「医師の充足等の指標になるものではない」と断じた。また、国が提示する外来医療機能に関しては、地域医療への貢献が約束されるものではないとし、「自由開業医制度を形骸化に導く」と強調。医師少数区域での勤務に係るインセンティブとあわせて「容認できない」との姿勢を示した。そのほか、6月に近医連から日医へ提出した「医師確保計画・外来医療計画に関する要望書」に対する回答に触れ、地域医療体制の構築は「単なる数字合わせでは解決しない」と言及。まずは数年かけて地域の実情把握を進めることだけに専念すべきと求めた。

第3分科会/医療情報
医師資格証の普及推進
課題や取り組みなど示す

 第3分科会(医療情報)では、「医療等IDの実現に向けて」「医師資格証」について意見を交換した。
 はじめに日本医師会役員が紹介され、松原謙二副会長、石川広己常任理事があいさつ。松原・日医副会長は、厚生労働省の悲願は「医師の管理」とし、医師免許証とマイナンバーカードを絡めた医師免許の更新制度を企図していると指摘。現行の制度を維持することが重要であり、そのためには「医師資格証の普及が必要」として協力を求めた。
 協議では事前のアンケートに基づき、各府県が発言。「医療等ID」では、▽日医の提言▽ITリテラシーの醸成▽医療機関のキャッシュレス決済――について述べられた。大阪府医師会からは、大平真司理事が報告。健康寿命延伸を目的に医療等IDを活用する事業展開には賛意を示すも、マイナンバーカードによる被保険者資格の確認などには慎重な姿勢を示した。また、府医では医療情報委員会を中心として「IT化へ向けた啓発を行っている」と説明。更に日医へはIT人材育成に向けた研修を要望した。キャッシュレス決済に関しては、各府県がメリットとデメリットを提示。府医からは利便性の向上を挙げる一方で、導入コストや情報漏洩が危惧されるなどの問題が述べられた。
 「医師資格証」では、普及が芳しくない状況下で、それぞれの取り組みが紹介された。大平理事は、「府医では役員が率先して申請し、郡市区等医師会長協議会、医療保険講習会などの場で新規登録を依頼した」と説明。あわせて、取得を促すパンフレットを独自に4千部作成し、郡市区等医師会に配布。その結果、2カ月で取得者数が約180人増え、637人(府医会員取得率3.64%/8月17日現在)になったと加えた。また、今後の展開についても話し合われ、▽オンラインによる保険請求業務に活用▽各種学会の単位を管理▽身分証明証として確立――などが期待されるとともに、「医師資格証取得へのインセンティブにつながるのではないか」との見解が示された。
 最後に、石川・日医常任理事が「日医のIT戦略」の現状と課題を解説。医療等IDや電子カルテなどITによる有益性に付随する個人情報保護が課題とし、「究極の個人情報を扱う責任を認識することが必要」と締めくくった。