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医師・医療関係者のみなさまへ

障害者総合支援制度と医師意見書に関する説明会

府医ニュース

2019年9月25日 第2905号

住み慣れた地域で安心して生活できる社会へ

 大阪府医師会では、大阪府からの委託を受け、「障害者総合支援制度と医師意見書に関する説明会」を開催している。令和元年度は8月1日に開催し、約100人が聴講。大阪府の障害福祉制度や医師意見書を記載する際の留意点を確認した。

医師意見書の重要性伝える

 李利彦氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員/大阪精神科診療所協会副会長)が座長を務め、はじめに中尾正俊副会長があいさつ。続いて、吉岡美紀氏(大阪府福祉部障がい福祉室障がい福祉企画課長補佐)が、「障がい者制度と最近の動向」について講演を行った。

30年度報酬改定サービス利用を促進

 まず、障害者数全体は増加傾向で、障害者福祉サービス等予算も拡大しているとした上で、障害保健福祉施策の変遷に言及。平成18年に障害者自立支援法が施行され、「身体」「知的」「精神」の3障害が共通の制度となり、25年に障害者総合支援法への移行で難病等も対象になったと振り返った。また、30年度障害福祉サービス等報酬改定に触れ、▽障害者の重度化・高齢化への対応▽医療的ケア児への支援▽就労支援サービスの質向上――などの重点項目とあわせて、本改定のトピックとして、「重度訪問介護の訪問先拡大」「高齢障害者の介護保険サービスの円滑な利用」を説示。前者は、重度訪問介護を利用する「障害支援区分6」の障害者が医療機関等へ入院した際に、現在のヘルパーを引き続き利用し、「利用者ごとに異なる特殊な介護方法について、本人に合った環境や生活習慣を医療従事者に伝達する等の支援をすることができる」とした。一方、後者においては、高齢障害者が介護サービスを利用する場合、利用者負担上限が異なるため新たに負担(1割)が生じるケースが課題であったことから、「利用者負担を軽減する仕組みが設定された」と説明。加えて、障害福祉サービス事業所が介護保険事業所になりやすくするなどの見直しも実施され、「介護保険サービスの円滑な利用を促進する」方向との趣旨を示した。
 吉岡氏は更に、障害支援区分は「どこに住んでも平等・公平にサービスを利用できるための指標」であり、標準的な支援の度合いを決定するために必要と説示。コンピューターによる一次判定、市町村審査会での二次判定を経て決まるが、医師意見書が重要な役割を果たしており、『医師意見書記載の手引き』(厚生労働省/26年4月)や『障害支援区分 医師意見書記載の要点』(大阪府/29年2月)などを参考に、「適切な記載を願いたい」と強調した。最後に、障害者差別解消法における「不当な差別的取扱い」「合理的配慮」について解説。大阪府の取り組みを報告するとともに、医療機関にも協力を訴え、「障害者が安心して生活できる社会を目指したい」と語った。

 障害者総合支援法に基づく制度などの詳細については、大阪府のホームページを参照願いたい。

適切な障害支援区分認定には医師の協力が不可欠
中尾副会長あいさつ

 平成18年に障害者自立支援法が施行され、身体・知的・精神の3障害が一元的にサービスを提供される制度となった。25年には障害者総合支援法に基づき、医師意見書が重要な役割を果たす「障害支援区分」が定められた。これにより、「制度の谷間」となっていた難病の方々に関しても障害支援区分によるサービスが提供される方向となり、現在、指定難病制度と整合性を図りながら361の疾病が対象になっている。障害支援区分の決定にあたり、医師意見書の重要性は一層増している。障害者が住み慣れた地域で、支援区分に基づいた適切なサービスが受けられるよう協力を願いたい。

意見書の書き方ポイントを解説

 中村芳昭氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員/大精診理事)が登壇。「医師意見書の書き方のポイント」について解説した。中村氏は、医師意見書の「行動及び精神等の状態に関する意見」に記載されている、①行動上の障害②精神症状・能力障害二軸評価③生活障害評価④精神・神経症状⑤てんかん――について、具体的に説明するとともに、評価の基準や留意すべき事項を述べた。また、参考とした上で、自立支援医療などの判定時に考慮される病名としてICDコードF0~F3を説示。アルツハイマー病の認知症、統合失調症、うつ病――を取り上げ、その特徴や診断基準を示した。

障がい福祉サービスに関するお知らせ(大阪府)
 重度訪問介護の入院中利用について

 平成30年4月から、重度訪問介護を利用する障がい支援区分6の障がい者については、入院または入所している病院等においても、病院等の職員と意思疎通を図る上で必要な支援を基本とした重度訪問介護の利用が可能となっています。
 対象は障がい支援区分6該当者で、病院等に入院・入所する前から重度訪問介護を利用している方となります。
 詳しくは各市町村の障がい福祉主管課へお問い合わせください。