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医師・医療関係者のみなさまへ

勤務医の窓

2025年までの道のり

府医ニュース

2019年9月18日 第2904号

―三位一体改革―

 「大阪・関西万博」が2025年に開催されることが決まりました。テーマは「いのち輝く未来社会」ということで、世界中の最新の医療技術や健康への取り組みがたくさん展示されるでしょうから、70年に「月の石」を見たのと同じ感激を、しかも医療や健康の分野で味わえることに今からわくわくしています。
 25年は同時に、75歳以上の人口がピークを迎える年です。高齢化社会・人口減少に加え、中河内医療圏では大阪市内への患者流出が顕著で、医療の集約化・統合も検討されると思われる中、高齢化社会では「地域」での医療の完結を望む声が強く、「地域」を意味する範囲が小さくなってきていると感じています。そこで当院でもロボット手術やハイブリッド手術、ゲノム医療など、高度な医療に対応できるように機能強化に努めています。そして、比較優位の理論に基づき、地域内での病病連携を強化して、それぞれの病院が特色ある医療を提供して「地域内で統合」された医療体系を構築することが必要だと考えています。
 90年代後半から導入された医学部地域枠は06年度以降急速に拡大され、17年度には71大学に設置されて1674人分と医学部の定員の18%に達していますが、充足率は80%未満と報告されています。地方創生と絡め、医療においても地方の魅力を創り出すことは喫緊の問題で、24年頃に医師需要が約30万人で均衡し、その後は供給が上回ると試算されておりますが、都市部への医師の集中、地方自治体病院の医師不足はより顕著になる可能性も指摘されています。当院の周辺も個人的には都市部の田舎感を感じており、差別化できる魅力づくりに励むつもりです。
 働き方改革に関して、24年4月から新時間外労働規制が適用され、すべての診療従事勤務医が「年間の時間外労働960時間以下」を目指すことが求められています。90年の「24時間働けますか」時代に育ってきたものとしては、人生観、人生プランを変える必要があります。
 個人的にはこのまま順調にいくと23年に定年を迎えます。上記の24、25年問題はその先になりますが、この大きな変動期に働けることを感謝して定年までしっかりと勤め上げ、万博を楽しみたいと考えています。

市立東大阪
医療センター院長
辻井 正彦
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