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医師・医療関係者のみなさまへ

令和2年度大阪府・市予算編成へ要望

府医ニュース

2019年9月18日 第2904号

国民皆保険制度を守る

 堺市医師会と泉州地域ブロック6医師会(泉佐野泉南・泉大津市・高石市・和泉市・岸和田市・貝塚市)で構成する七石会では、令和元年度総会を8月31日夕刻、堺市内のホテルで、貝塚市医師会(市川正裕会長)の主務により開催し、約100人が参加。大阪府医師会からは、茂松茂人会長、中尾正俊・高井康之・加納康至副会長、松原謙二・日本医師会副会長(府医理事)が出席した。
 開会のあいさつで、市川・貝塚市医師会長は、8月末の九州北部地域での大雨被害をはじめ、記録的な豪雨による被害が頻発している状況に言及。その上で、東南海地震を想定した様々な防災訓練などが行われ、防災体制が次第に充実してきている現状を評価した。更に、自治体などにおいて発電機、投光器、飲料水などの備蓄が進められているとした上で、災害時には医師会に出動要請が行われることが想定されると指摘。防災マニュアル作成の困難さや、停電による連絡網遮断に伴う影響の大きさなどを説明し、災害に備えることの重要性を強調した。
 来賓としてあいさつに立った茂松・府医会長は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に達する2022年からの問題などに触れ、給付と負担のバランスを巡って本格的な議論が始まると指摘。9月には内閣改造、10月には臨時国会および消費税増税、来年度には診療報酬改定などが控えており、大きな戦いになると力説した。また、7月末に実施された第25回参議院議員選挙を振り返り、士気が高まっていないと問題視。更に、市販薬に類似した湿布やビタミン剤などの軽症者向け医療用医薬品の一部を公的医療保険の対象外にすることの検討を始めたとする報道があることを紹介。社会保障を充実させ、経済成長を促すべきとした上で、医療は国民とともにある、と心に命じて日々の診療にあたり、国民の命と健康を預かっているとの意識の下、国民とともに行動することが重要と訴えかけた。
 続いて、松原・日医副会長が「医療における諸問題について」と題して特別講演。IT・HPKI・ORCA、家庭医制度・包括支払制、医師需給・新専門医制度、総合診療専門医、高齢者社会における国民皆保険の維持、安楽死・尊厳死・ACP、オンライン診療、医療事故調査制度、消費税――の各項目について解説した。松原副会長は、海外と我が国の医療制度の違いなどを説明しながら、国民皆保険制度を維持しなければならないと強調。患者のために十分な医療を行えることが最も重要であると締めくくった。

外国人医療対策の充実など求める

 大阪府医師会では例年、大阪府・大阪市の次年度予算編成に際し、「府民の健康を守る専門団体」として、地域住民の健康保持・増進、適切な医療提供体制の構築などについて要望している。
 8月22日には茂松茂人会長、中尾正俊・高井康之・加納康至副会長、阪本栄・宮川松剛・栗山隆信理事、前久保邦昭・大阪市医師会連合会長の8名が大阪市役所を訪問。冒頭、茂松会長が令和2年度大阪市の予算編成に対する要望書を大阪市長(鍵田剛副市長が代理)に手交した。茂松会長はあいさつで、市民の健康を守るために行政と医師会が車の両輪として活動していかねばならないと力説。経済格差が広がり、市民が不安を感じている現状を問題視した上で、大阪市とともに社会保障を充実させ、市民の安全・安心を守っていきたいと述べた。
 続いて、中尾副会長が24項目の要望について主な項目を説明し、大阪市民病院事業における安心・安全な地域医療体制の確保などを要請。前久保・市医連会長は、地区医師会と各区保健福祉センター・区役所との連携強化を要請した。
 それを受けて鍵田副市長が、関係部局と調整の上、9月からの予算編成の中で議論していくと回答。加えて、外国人医療などへの対策における協力を府医に求めた。
 また、8月28日には茂松会長、中尾・高井・加納副会長、阪本・栗山理事が大阪府庁を訪問。茂松会長が大阪府に対する要望書を大阪府知事(山野謙副知事が代理)に手交した。茂松会長はあいさつで、経済のグローバル化の進展に伴って経済格差が広がり、中小企業の街である大阪では特にその傾向が顕著であると問題視。人口減少・超高齢社会を迎える今後に向け、社会保障を充実させ、大阪の健康水準を引き上げてほしいとした。
 続いて、中尾副会長が30項目の要望について主な項目を説明。がん検診受診率向上とがん医療の提供体制の整備、外国人医療対策、感染症対策に対する危機管理、勤務医対策などの充実を求めた。
 これらの要望を受けて山野副知事が、地域医療の確保には医師会の協力が不可欠であると断言。更に、医師会の協力の下、地域医療構想・医師偏在対策・医療従事者の働き方改革を三位一体で進めていきたいとするとともに、2025年の大阪万博を控え、医師会との二人三脚で府民の健康を守っていきたいとした。
 各日とも、府医からの要望の後、府・市幹部職員と大阪府地域医療推進協議会(協議会長=茂松・府医会長)の懇談を実施。加盟団体の代表より令和2年度予算編成にかかる要望事項を伝達した。