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家族を介護・保育することに財政出動

府医ニュース

2019年9月18日 第2904号

 地域包括ケアなどの講演会では、少子高齢化を表すたとえとして、高齢者を若者が下で支えているイラストがよく引用されます。昔は高齢者一人を神輿のように多くの若者が支え、今は若者が2人で一人の騎馬戦型となっています。この割合いは生産年齢層と高齢者の人口比率であり、言い換えれば「何人の働き手が1人の高齢者を支える社会となるのか」を表すものです。これからは少子高齢化が激しくなるので高齢者の医療と介護をみんなで考えましょうというのが包括ケアにおけるこの図の引用の狙いだと思います。

しかし、数字は単純に人口比率ですので、低賃金にあえぐ生産年齢の介護の金銭負担はもっと厳しいものとなっています。少子化と言え保育費の負担も若者には同様でしょう。私の外来では、介護・保育職が明らかに増加した結果、自分の家族の介護・保育が仕事のため出来ないケースを見かけます。自分の家族より他人の家族を見たほうがビジネスになる、つまり家族の仕事を市場化したのが我が国の介護・保育業界への規制緩和ではないかということを以前書きました。私は思います。自分の家族を見ることも立派な労働ではないか。国がお金で国民の介護や保育を支えることが出来ないのか。つまり、財政出動で国が生産年齢人口の足りないところを補うという発想はないのだろうかと。

実際の介護・保育に対し対象者一人あたり月額数万円の補助があれば、デフレ脱却と少子化対策の一助にもなると思います。もちろん、その原資は逆進性のある消費税ではありません。政府が財政出動をすればお金が増えます。国の赤字は民間の黒字。デフレの今、消費減税とともに大切な政策になると考えます。(真)