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医師・医療関係者のみなさまへ

時の話題

急がれるがん検診受診率の
向上と生活支援の推進

府医ニュース

2019年9月18日 第2904号

 がん患者は増加しており、70歳までに男性は5人に1人、女性は6人に1人が、がんに罹患するリスクがあるとされている。大阪府においてもがん罹患者は年間5万人を超えており、年間2万人余りの人ががんにより亡くなっている。
 現在、死亡原因は脳血管疾患、心疾患を抜き、がんが第一位となっており、約3人に1人が、がんで亡くなっている。一方、がん治療(放射線療法、化学療法、手術療法)の進歩は目覚ましく、新しい薬剤の開発などもあり、生存率は年々上昇している。
 がんは3人に1人が就労可能年齢で罹患していることから、仕事を持ちながら悪性新生物で通院している患者も多く、30万人を超えている。このような状況から、仕事とがん治療との両立を支援する体制の充実が、がん医療の喫緊の課題となっている。実際、がん診療連携拠点病院相談支援センターによると、「働くこと」に関する相談は34.6%あり、その内容は生活費・治療費、保険などの経済面や仕事と治療の両立の仕方が多い。政府に対するがん対策についての世論調査でも、がんによって就労が困難になった際の相談・支援体制の整備を要望するものが少なくない。
 ある調査によると、がんの診断後、勤務者の34%が依願退職、或いは解雇され、自営業者の13%が廃業している。その結果、有職者の29%が無職、10%が転職しており、有収入者の22%は減収、19%が収入なしになっている。平均年収も診断前は約395万円、診断後は約167万円に減収となっている。
 このような問題は成人がんに限ったことではなく、小児がんについても同様である。小児がんの年間発症患者数は2000~2500人程度であるが、治療成績の進歩は目覚ましく、現在、5年生存率は7~8割に及ぶ。治療終了後、成人期に様々な身体的晩期合併症や心理的・社会的不適応を呈する小児がん経験者が存在する。就労は小児がん経験者が社会人として長期的な自己実現を目指す際に、自立を得るために必要なことであるとの考え方から、重要な課題である。
 2016年12月にがん対策基本法が改正され、2017年10月に第3期がん対策推進基本計画が策定された。大阪府においても2018年度から2023年度の5年間を計画期間とする第3期大阪府がん対策推進計画が策定された。計画では「がん死亡率の減少」「がん罹患率の減少」「がん患者や家族の生活の質の確保」を目標としている。大阪府のがん検診受診率は向上しているものの、依然として全国最低レベルに留まっている。検診受診率の向上と治療と就労との両立支援など、必要な生活支援を受けられる環境整備が急がれる。