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健康スポーツ医学再研修会

府医ニュース

2019年9月4日 第2903号

運動と食欲との繋がりなど解説

 大阪府医師会は8月8日午後、府医会館で令和元年度「健康スポーツ医学再研修会」を開催。3題の講演を実施し、約180人が参集した。
 開会にあたり、あいさつした前川たかし理事は、超高齢社会における健康スポーツ医の役割の重要性を強調。本研修会を通じて様々な知識を習得してほしいと述べた。
 まず、嶋洋明氏(大阪医科大学整形外科学教室講師〈准〉)が「足部・足関節のスポーツ傷害――捻挫により生じる傷害と治療」と題して、スポーツ傷害の約3割を占める足関節捻挫の診断・治療について詳説。近年は骨折の有無に加え、超音波検査を用いて靭帯損傷の有無を確認し、捻挫の程度(Ⅰ~Ⅲ度)を診断するとした。また、初期治療が大切と述べ、初期で行われるRICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)を紹介。そのほか、重度損傷への手術療法、足関節捻挫により生じる傷害・疾患に関して説明を加えた。
 続いて、木村穣氏(関西医科大学健康科学センター長)が運動負荷試験講習(総論)を実施。「循環器領域を越えた運動負荷試験――メタボリックシンドロームからサルコペニアまで」をテーマに、様々な領域における運動負荷試験の有用性・必要性を解説した。運動処方のほか、呼気ガス分析を併用した心肺運動負荷試験では運動耐容能の評価、運動制限のある患者の鑑別診断、心血管患者の評価に活用できると説明。今後は、サルコペニアなどの指標としての役割にも期待したいと締めくくった。
 最後に、吉川貴仁氏(大阪市立大学大学院医学研究科・医学部医学科都市医学講座運動生体医学教授)が「食欲と運動との生理学的な繋がり――食・動・脳連関」と題し、「食欲」と「運動」の関係について解説。血中消化管ホルモン濃度の変化により、①一過性の運動は食欲を減退させる、②継続的な運動は空腹時の食欲を増加させる一方、食後の満足感を得られやすくする――との研究結果を示した。また、視覚による食刺激と運動の関係などにも言及。運動はエネルギーを消費するだけでなく、「食欲」を自然な形に整える働きがあると指摘した。