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時の話題

地域医療構想実現に向けた公立・公的医療機関等の役割

府医ニュース

2019年9月4日 第2903号

日医総研ワーキングペーパー(№432)より

 現在、2025年(令和7年)の地域医療構想の実現に向けて、二次医療圏ごとに地域医療構想調整会議が行われているが、国の考える医療提供体制の効率化が遅々として進まない状況にある。そのため、公立・公的医療機関等には、医療機能について民間病院と競合、あるいは他の医療機関による代替可能性がある場合においては、他の医療機関に機能を統合することの是非について協議し、2年3月までに合意を得ることとされている。民間医療機関も、7年における地域医療構想の実現に沿ったものとなるよう対応方針の策定を改めて求める。
 このような取り組みによっても病床の機能分化・連携が進まない場合には、2年度に実効性のあるものとするために、知事の権限の在り方についても検討し、できる限り早期に所要の措置を講じるとされている。新公立病院改革ガイドラインでは、公立病院には次の機能が期待されている。①山間へき地・離島など民間医療機関の立地が困難な過疎地等における一般医療の提供②救急・小児・周産期・災害・精神などの不採算・特殊部門に関わる医療の提供③県立がんセンター、県立循環器病センター等地域の民間医療機関では限界のある高度・先進医療の提供④研修の実施等を含む広域的な医師派遣の拠点としての機能――である。つまり、不採算などの理由から民間病院ではできない医療機能を担う。
 大阪府においてはいわゆる5疾病・5事業のへき地医療は基本的には該当しないとの考えから、上記①以外の機能を担うことになる。しかし、大阪府の特徴として二次救急、精神科医療は民間医療機関が大部分を担っており、小児・周産期医療についても必ずしも十分に地域に必要な役割を果たしているとは言えない。
 日医総研ワーキングペーパー(№432)によると、平成29年における公立・公的医療機関は約1500病院(18.9%)、病床数は約46万1千床(29.6%)である。これら公立病院(都道府県・市町村・地方独立行政法人)には、8083億円の繰入金が投入されている(29年度)。ランニングコストに対する繰入金も1病院当たり7億円に上がっている。また、公立病院がある地方公共団体に対して地方交付税(普通交付税、特別交付税)が措置されている。公的医療機関にも地方公共団体から公立病院の繰入金に準じた運営費交付金等が投入されているケースがある。
 このような繰入金によっても医業利益率が赤字である病院は少なくない。公立・公的医療機関等が担う役割は、都市部と地方の不採算地区では異なる。今後、地域医療構想の実現に向けて知事権限の及ぶ公立・公的医療機関等、更には民間医療機関についても診療実績に基づいた地域での役割の明確化が求められることになる。