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時事

〝つながり続けること〟と〝断らない相談支援〟

府医ニュース

2019年8月28日 第2902号

「地域共生社会推進検討会」中間取りまとめ

 7月19日、厚生労働省「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会(地域共生社会推進検討会)」中間取りまとめが公表された。この検討会は、平成29年介護保険法等改正法の附則による、公布後3年(令和2年)の見直し規定に基づいて設置されたもので、5月16日に第1回の会合が開催されていた。
 今回の中間取りまとめでは、共同体機能の一層の低下や、人口減少による地域の持続への懸念など近年の社会の変化により、従来の社会福祉政策の枠組みでは、個別制度の要件に該当しなければ支援対象とならない、8050問題(80代の親が50代で無職独身の子の生活を支える)のような複合的ニーズに柔軟に対応できない、人生を通じた一貫した支援が受けられない、といった問題を指摘。
 今後は、課題を抱えながらも自律的な(主体的に自らの生き方を追求できる)生の継続を支援する機能の強化が求められるとした。
 そのために、現金・現物給付による「具体的な課題解決」に加えて、相談支援(手続的給付)を重視した「つながり続けること(伴走型支援)」を目的とするアプローチを、支援の両輪と位置付けている。共通の基盤に、本人を中心として〝伴走〟する意識を据え、中核の機能には、〝断らない相談支援〟を掲げた。
 専門職によるこれらの支援と、子ども食堂や認知症カフェなどに代表される、専門職が関わる中で地域住民が出会いお互いを知ったり学び合う機会、すなわち「住民同士のケア・支え合う関係性」の双方を基盤として、多様な関係性が生まれ、それらが重なり合うことで、重層的なセーフティネットが構成されていくとしている。自助・互助・共助・公助を固定的に捉えない、考え方の転換が必要とした。
 結果、市町村における包括的な支援体制は、【断らない相談】および【参加支援】(社会とのつながりや参加の支援)、【地域住民同士のケア・支え合う関係性】の育成支援、これら3つの機能を一体的に備えることが必要であり、それにより〝つながり続ける〟伴走支援が具体化できるとした。
 そして、地域特性を踏まえながら、縦割りを超えて、多様な体制整備を支援するための柔軟な財政支援が不可欠とした。
 今後の具体化のための検討項目として、▽参加支援の具体的内容▽包括的支援体制の圏域、協議体、計画、人員配置等のあり方▽都道府県の役割▽保健医療福祉の担い手の参画促進――を挙げている。
 同検討会は、年内に最終報告をまとめ、来年の法改正を目指す計画とされる。
 「地域共生社会」の推進母体は、市町村と位置付けられ、当初より、福祉の地域住民への丸投げとの批判があった。国の検討会の提言により、制度の横断的運用が財政的にも可能になるのは望ましいことではあるが(これまでは補助金の目的外使用との批判を受ける場合があったという)、一方で、国から自治体、自治体から地域と、丸投げの連鎖とならないことを願う。
(学)