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緊縮思想である低成長分かち合い論

府医ニュース

2019年8月21日 第2901号

 ゼロ金利が持続していくということは経済成長が望めず、資本主義が止まっていくということ。ある経済学者は、物質が溢れ成熟した我が国には成長分野が残されていないのだと言う。
 また別の経済学者は「経済成長は限界にきている、成長を目指さず消費税を中心に増税して皆で支え合おう」と言う。この経済政策は、いくつかの業界団体や一部の野党議員に支持されている。また、与党も教育無償化の財源を消費増税でと打ち出した。ようするに、与野党にこの緊縮思想は広まっていると考えてよいだろう。
 低成長の中、国民で分かち合いをする政策、つまり、消費増税をしつつ経済成長を打ち出そうとすると何が起こるか。従来の分野では成長は見込めないので、(一部の有識者が望む)成長分野に恣意的に「選択と集中」がなされる。そして、人々の営みに必要な社会基盤には国民の慎ましい「分かち合い再分配」が施されてしまうのだ。
 どの業界団体も補助金を調達するために革新的、挑戦的なビジネスを重視し、従来の当たり前の営みはおざなりになる。結果、業界の先細りを招き、貧富の格差が広がるのだ。成長するための基礎・土台を削って、目新しいものに対しお上が投資する。しかし、技術やサービスの進歩した世の中になっても庶民は苦しい生活を余儀なくされる、まるで、豪華な地獄というべき状況ではないか。
 分かち合いの財源を税とするなら、中・低所得者に負担がかかる消費増税では無理がある。私は、デフレである今こそ、政府がイノベーションにではなく、防災も含む基礎的な生活・業界活動に財政出動することが王道であると思う。そのようにしてデフレを脱却した後、イノベーションは地力がついた民間が独自に生み出すのだ。企業にチャレンジ精神がないと嘆く前に、現在の政府、つまり小さな政府を推進するものたちが何をしているか、よく考えるべきだと私は思う。
(真)