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医師・医療関係者のみなさまへ

時事

無給医問題をどうする

府医ニュース

2019年8月21日 第2901号

診療報酬含む抜本的解決が必要

 報道等にて医師の給与に関する問題が指摘されている。ひとつは残業代が正当に支払われていない点であり、当直を含めて病院は労働基準監督署の指導を受けて是正に取り組んでいるが、経営的に大きな負担となっている。もうひとつの問題は大学病院における無給医の存在であるが、これを論ずるにあたっては、医師が大学で教育と研修のみを受けているのかあるいは附属病院で診療(=仕事)をしているかについて整理する必要がある。
 大学病院は診療を行っているが、本来は教育機関で、教授等の職員は教育職であり、併任として附属病院で教育を主目的とした診療を行っている。すなわち、辞令はまず教育職を命じ、併せて医療職を命ずとなる。この立場を理解する必要があり、無給医と言われる医師も大学で学んでいる研究生であるか否かを明らかにすべきである。大学院生は学生で、大学院に入学し、研究と研鑽中の身であり、大学に授業料を支払っている。研究・研鑽のために行う臨床は給与の対象とはならない。他方で、附属病院が大学院生や研究生を診療を行うマンパワーとして雇用するならば給与を支払うべきであるが、この点が長年に亘って曖昧にされてきた。
 大学と大学病院の経営は厳しく、大学院生等をマンパワーとして活用してきたことは事実であり、見直すべきと考える。まず、医師を育てるには多額の費用がかかることを理解し、大学医学部に対する十分な経済的支援を国はすべきである。また、附属病院の経営が無給医を活用しなくとも成り立つように診療報酬も改定すべきである。もうそろそろ医療者の自己犠牲に国が甘えることを止めるべきと考える。米国は多額のグラントを大学(病院)などの研究者に提供することにより支援しているが、日本の科学研究費等は不十分である。研究者が研究に専念できるようにすることが、日本の医学レベルを高めることになると思われる。
 大学病院への国の支援の充実により、無給医問題が解決することは重要かつ喜ばしいことではあるが、その結果として一般市中病院の医師不足に拍車がかかることが危惧される。医師の働き方改革でも指摘されたが、医師が充足するあるいはしているとの試算は医師が他業種の人々よりも長い時間働いていることによってもたらされたものであることを日本医師会は客観的データに基づいて証明すべきである。一方、大学による一般病院への人材派遣のシステムは、専門の細分化等により受け手側病院のニーズはますます高まっているが、厚生労働省が過去に壊してしまった為、復旧は困難となっている。いずれにせよ、診療報酬を改正しなければ、大学病院も一般病院も今後の運営は困難となっていくと思われ、早急な改善が望まれる。(中)