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時の話題

フォーミュラリー策定

府医ニュース

2019年8月21日 第2901号

期待される有用性と懸念

 国は医療費削減や国民皆保険制度堅持などの視点から、後発医薬品の使用を促進している。平成28年6月に閣議決定された「骨太の方針2016」では、医療費適正化計画においては、後発医薬品の使用割合を80%以上とすることに向けた使用促進策を記載するとともに、重複投薬の是正に関する目標やたばこ対策に関する目標等の設定を行い、これらの取り組みを推進することとされた。また、医薬品の適正使用の観点から、複数種類の医薬品処方の適正化の取り組みを実施し、費用対効果評価の導入とあわせ、革新的医薬品等の使用の最適化推進を図るとともに、生活習慣病治療薬等の処方の在り方等について検討を開始することなどが記載された。
 29年11月の中医協総会では、降圧薬などの生活習慣病治療薬の標準的な薬剤選択を推進する方策として、フォーミュラリーに関して議論された。更に同年10月の経済財政諮問会議では、ジェネリック医薬品の使用促進策として、フォーミュラリーを病院ごとに策定するよう提案された。
 フォーミュラリーとは、医薬品の有効性・安全性などのエビデンスと経済性を総合的に評価して、医療機関、地域、保険者ごとに策定する医薬品の使用指針とされる。フォーミュラリーの策定・導入により、多くのメリットが期待されている。つまり後発医薬品を基準薬とすることでの医薬品費の削減、採用薬品数や医薬品の効率活用による医薬品購入費の削減などから医療機関の経営面への寄与が期待される。更にエビデンスによる医薬品の有効性・安全性評価により、運用管理において医薬品の使用実態調査や副作用モニタリング、医薬品に関する過誤対策がなされるようになり、医薬品リスク管理の向上につながるとされる。
 日本でのフォーミュラリーは、一部の大学病院が院内フォーミュラリー、地域医療連携推進法人が地域フォーミュラリーとして先行的に導入しており、DPC対象病院・準備病院などで広がりつつある。6月26日の中医協総会でもフォーミュラリーについて議論され、多くの委員が有用性に理解を示した。しかし、フォーミュラリーの活用を診療報酬で評価することについては、患者の個別性などを考えれば慎重であるべきとの意見が相次ぎ、実施主体についても偏ったフォーミュラリーにならないように配慮が必要であるとの意見が出された。
 現在、フォーミュラリーを導入・検討している地域・医療機関が少しずつ増加し、その効果が報告されているが、経済性を優先するあまり、画一的な治療にならないか、営利目的の新たなビジネスのフィールドにならないか、慎重な議論が求められる。