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医師・医療関係者のみなさまへ

第2回周産期医療研修会

府医ニュース

2019年8月7日 第2900号

出生前遺伝学的検査の今後を考える

 令和元年度第2回周産期医療研修会(大阪府医師会主催/大阪府委託事業)が7月6日午後、大阪市内で開催された。今回は「周産期医療の遺伝診療」をテーマに、医療関係者約120人が受講した。

 開会のあいさつで笠原幹司理事は、母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)への意識が高まりを見せる一方で、学会に申請せず、無許可で検査を行う医療機関の存在をはじめとした問題を指摘。本研修会でその現状を把握し、今後の課題について考えてほしいと述べた。
 大西聡氏(大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学講師)および早田憲司氏(愛染橋病院産婦人科部長)が座長を務め、中村博昭氏(大阪市立総合医療センター産科担当部長兼遺伝子診療部副部長)が「NIPTのこれまでとこれから――その光と影」と題して講演を行った。中村氏はまず、NIPTの歴史を概説した後、同センターにおける出生前診断の受検率を紹介。40歳代は全体の3割超がNIPTを含む出生前診断を受検しており、一般には年齢を重ねるごとに受検率が上がっていく傾向にあるとした。続いてその検査方法と原理を解説し、「あくまでも精度の高い非確定的検査である」と述べ、出生前診断のひとつの手段と捉えてほしいとした。また、検査施行前後の遺伝カウンセリングの必要性に言及。▽非指示的▽共感的理解▽自律性の尊重――を意識し、患者の希望に寄り添うことに重点を置いてほしいと語った。
 引き続き、澤井英明氏(兵庫医科大学病院遺伝子医療部・産科婦人科教授)が「周産期遺伝診療と出生前診断のコンセンサスを考える――医療者・妊婦・胎児・患児・家族・社会の視点から」と題して講演。澤井氏は、胎児が出生前診断によって異常を認められた場合に、「選択的中絶」へとつながる可能性を倫理的な課題として挙げるとともに、母体保護法の適応と乖離した人工妊娠中絶が行われている実情を指摘。「胎児に異常が認められた際の人工妊娠中絶について」を母体保護法へ明記することに関して、様々な立場からの意見を紹介した。更に、着床前診断に言及。出生前診断と異なり、妊娠前から疾患の排除が可能であるとしながら、「生命を選別する」という点では同じであるとし、倫理的問題が解決するわけではないと語った。